復活!ゴーゴーズ、コロナ禍のオンライン配信にみるアーティストたちの現在地 1981年 7月8日 ゴーゴーズのファーストアルバム「ビューティー・アンド・ザ・ビート」が米国でリリースされた日(ウィ・ガット・ザ・ビート 収録)

コロナ禍における音楽イベント、光る大御所たちの存在感

2020年4月18日、WHO(世界保健機関)と国際支援団体グローバル・シチズン主催のチャリティーイベント『One World:Together at Home』がオンライン上で行われ、世界中のTV局やストリーミングサービス等で配信された。日本でもフジテレビでオンエアされたので、ご覧になった方も大勢いるだろう。

イベントの目的はCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)対策支援で、発起人であるレディー・ガガの他、クリス・マーティン(コールドプレイ)、エディ・ヴェダー(パール・ジャム)、ビリー・ジョー・アームストロング(グリーン・デイ)、ビリー・アイリッシュ、テイラー・スウィフト、セリーヌ・ディオン、アリシア・キーズ、ファレル・ウィリアムス等、100組以上のアーティストが自宅から出演した。

もちろん、この手のイベントには大御所の存在も欠かせない。今回もスティーヴィー・ワンダー、ポール・マッカートニー、エルトン・ジョンが、高齢であるが故のコンディションの良し悪しはあったものの、自分たちの役割をしっかりと全うしてイベントの “箔付け” に貢献した。

印象に残ったローリング・ストーンズのユルさ、でも、それが個性!

そんな中、僕の印象に最も残ったのは、ザ・ローリング・ストーンズだった。彼ら4人はそれぞれ別の場所から、ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、ロン・ウッド、チャーリー・ワッツの順に登場したのだが、そのノリのユルいことと言ったら…。

ミックの弾き語りで「無情の世界(You Can't Always Get What You Want)」が始まった所までは、まだ良かった。だが、キースとロンは一応ギターを抱えてはいたものの、その演奏はかなりテキトーな感じ。チャーリーに至っては、スティックを手にドラムを叩くフリをしているだけだった。

このチャーリーのパフォーマンス(?)に対して、ネット上では「エアドラムだ!」と称賛とも揶揄とも取れる反応が飛び交っていたが、こうしたユルい雰囲気やテキトーな立ち振る舞いさえも、バンドの個性として世界中に認められている(認めさせている)のが、彼らの凄いところだろう。

オンラインイベントで落ち着いて演奏をじっくり鑑賞

ところで、実を言うと、僕は巨大スタジアムでのコンサートや野外フェス、チャリティーイベントといった大掛かりなライブがあまり好きではない。ミュージシャンたちがステージ上でどんな演奏をしているかよく見えないし、演奏自体も雑になりがちだからだ。

だが、このチャリティーイベントを観て、オンラインだとこうした問題が一気に解消されることに気がついた。ミュージシャン一人ひとりを固定カメラで捉えているから、落ち着いて演奏をじっくり鑑賞することができるのだ。

そこで、僕は “ステイホーム期間” に配信された “ライヴ・アット・ホーム” な動画が他にもないかYouTubeを漁ってみることにした。すると、次から次に出るわ出るわ… これを “不幸中の幸い” と言ったら不謹慎だろうか。

ミュージシャンが自宅で演奏「In My Room」第一弾はブライアン・ウィルソン!

米国の音楽誌『Rolling Stone』は、ミュージシャンが自宅で演奏する「In My Room」という映像シリーズを2020年3月にスタートさせたが、その第一弾として登場したのが、なんと(!)ブライアン・ウィルソンであった。

彼はカリフォルニアの自宅からビーチ・ボーイズ時代の「恋のリバイバル(Do It Again)」やソロデビューアルバムに収録された「ラヴ・アンド・マーシー」を弾き語りしたが、彼の紆余曲折波乱万丈な人生を考えれば、カメラの前で元気な姿を見せたことだけで奇跡に近い。

こうした企画物の他にも、ミュージシャンが自身の公式YouTubeチャンネルで配信した動画もたくさん存在している。僕が特に気に入っているのがドゥービー・ブラザーズで、「ブラック・ウォーター」と「リッスン・トゥ・ザ・ミュージック」を2回に分けて配信している。

ビリー・ジョー・アームストロングは、毎週月曜日にカバー動画を公開する『ノー・ファン・マンデーズ』をスタートした。バングルスの「マニック・マンデー」を取り上げた際にはスザンナ・ホフス本人がゲスト出演したのだが、相変わらずのキュートさにビックリ(配信時点で61歳!)。その1年後、彼女は自身の公式チャンネルでこの曲や「胸いっぱいの愛(Eternal Flame)」の弾き語りを披露している。

ゴーゴーズ、5人揃って「ウィ・ガット・ザ・ビート」を披露!

で、バングルスと来れば、ゴーゴーズも取り上げない訳にはいかないだろう。実は彼女たち、2020年夏にドキュメンタリー映画『The Go-Go's』を公開し、約20年ぶりとなる新曲をリリースしている。そして、その余勢を駆って(かどうかは知らないが)、9月には5人揃って38年前のヒット曲「ウィ・ガット・ザ・ビート」を披露した。

1978年、LAで結成されたゴーゴーズは、メンバー間の意見の相違から1984年に解散した。活動期間は僅か6年で、その最後は驚くほどあっけないものだった。だから、そんな彼女たちが還暦を過ぎた今でも元気で楽しそうに演奏している姿を見られるなんて、当時は全く想像できなかった。

リードボーカルのベリンダ・カーライルは、現在、移住先のバンコクで幸せに暮らしているようだ。と言うのも、僕は先日、彼女が現地の旅行チャンネルで寺院や運河を案内している動画を偶然見つけたのだ。正直とても驚いたが、でも、往年のスターがこうして穏やかに過ごしている姿を見るのも悪くないな、と少しだけ思ったのだった。

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Song Data
■ We Got The Beat / The Go-Go's
■ 作詞・作曲:Charlotte Caffey
■ プロデュース:Paul L. Wexler(英国)、Richard Gottehrer, Rob Freeman(米国)
■ 発売:1981年7月27日(英国)、1982年1月16日(米国)

Billboard Chart & Official Chart
■ Do It Again / The Beach Boys(1968年9月3日 全英1位、9月14日 全米20位)
■ You Can't Always Get What You Want / The Rolling Stones(1973年6月9日 全米42位)
■ Listen To The Music / The Doobie Brothers(1972年11月4日 全米11位、1974年4月6日 全英29位)
■ Black Water / The Doobie Brothers(1975年3月15日 全米1位)
■ We Got The Beat / The Go-Go's(1982年4月10日 全米2位)
■ Manic Monday / The Bangles(1986年3月15日 全英2位、4月19日 全米2位)
■ Eternal Flame / The Bangles(1989年4月1日 全米1位、4月15日 全英1位)

カタリベ: 中川肇

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