何に投資をすればいい?決算説明会資料は投資材料の宝庫

この数か月、日経平均は方向感なく2万8,000円~3万円のレンジで推移しています。昨年の3月に日経平均は新型コロナウイルスの感染拡大で大きく値を下げましたが、それ以降は右肩上がりで推移しており、その急落時を除けば2019年からじわじわと上昇していました。ここ最近では値上がり期待が薄れてきた日経平均へのインデックス投資に変わり個別銘柄に興味を持ち始めた人も増えているようです。今回は銘柄探しのヒントを一緒に見ていきましょう。


お手軽に銘柄候補を絞る方法

3,700社以上も上場企業があるなかで、どの銘柄に投資をすればいいのかを探すのは大変な作業です。ただ闇雲に投資情報サイトや雑誌を見ていても、ただ時間が過ぎていってしまうだけ。そこで、オススメなのが書店で『四季報』を買ってきて、最初のページから最後のページまでパラパラとめくっていく方法です。もちろん、ただページをめくっているだけでは意味がありません。

『四季報』の場合は1ページにつき2銘柄の情報が記載されていますが、ページの最上部に直近3年間の株価の動きがチャートで示されています。このチャートが右肩上がりのものを見つけたら付箋を貼っていきます。この条件だとそれなりの数が候補にあがりますので、その後は付箋を貼った銘柄の業績を見ていきましょう。

足元の3~5年間における売上高と営業利益の推移を見ていき、順調に増収増益を続けている銘柄は付箋をそのまま残し、チャートの形は良くても業績は芳しくない場合は付箋をはがしてしまいます。

これぐらいの手軽な作業であれば、1日あれば投資候補の銘柄を絞り込むことができるかと思います。そして、ここから先は自分がよく知っている業種や、生活に密着している業種に属している銘柄を優先的に見ていくのです。

ビジネスモデルを理解しよう

投資には昔から伝わる格言がいくつもあり、その中の1つに「何をやっているか分からない企業には投資をしない」というものがあります。「何を当たり前のことを言っているんだ」と思うかもしれませんが、意外と何をやっている企業か知らないままに投資をしている個人投資家は多いのです。

足元で株価が堅調に推移していたり、ニュースやSNSでよく名前を見かけたりすると、ついつい投資をしてしまいたくなるようですが、何をやっているかも分からない企業に投資するのは危険です。しっかりと調べるようにしましょう。

前述のように自分がよく知っている業種や、生活に密着している業種に属している銘柄であれば、特に調べずともある程度は理解できますが、そうでない銘柄が先程の方法で候補に残ってしまった場合は、その企業の公式ホームページへいき、IRページから「決算説明会資料」をダウンロードして読み込んでみましょう。

決算説明会資料は企業毎に記載されている内容はバラバラですが、多くの企業では自社のビジネスモデルや、収益を生み出している各種主力事業で重視しているKPI(重要業績評価指標)を図表とともに説明してくれています。これを読むだけで、その企業がどのようなサービスや商品を提供することで収益を生み出しているのか、経営陣が何を重視しながら経営をしているのかがすぐに理解できます。

同じ業種でも戦略はバラバラ

企業の分析をしようとなると、ついつい貸借対照表や損益計算書といった財務諸表を見ようとしてしまいますが、まずは決算説明会資料を読み込んだ方がいいと思います。たとえば、決算説明会資料では売上高が細かく事業セグメントごとに分解されて解説されています。会社によっては損益計算書にも事業セグメントごとの売上高は記載されていますが、決算説明会資料の方が見やすいのでオススメです。

売上高を事業セグメントごとに見ることは非常に重要で、その理由を実感しやすいのがドラッグストア業界です。たとえば、上場しているドラッグストア業界で時価総額上位5位となると、ウエルシア、ツルハ、コスモス薬品、マツキヨ、スギ薬局とお馴染みの名前が並びます。これらはドラッグストア企業ですから、医薬品や調剤で売上をたてていると思うかもしれませんが、どの企業も売上高の2~3割程度でしかありません。実は、日用雑貨、食品、化粧品など他のセグメントで稼いでいます。

ドラッグストア企業の場合、どの企業も医薬品・調剤、日用雑貨、食品、化粧品という事業セグメントは同じですが、この比率はバラバラです。構成比率が投資をする際のシナリオに沿うかどうかが重要となります。たとえばコロナ禍においては、外食産業が軒並み時短営業に追い込まれる一方で、自炊や総菜への需要が高まりました。その間は当然、食品の扱いが多いドラッグストア企業の方が優位になります。

今後、コロナが収束して再び観光客が海外から来るとなると、今度は化粧品を多く扱うドラッグストア企業が優勢になるかもしれない。このようなかたちで、自分の考える投資シナリオと親和性の高い事業構成比を持つ企業を探していくのです。

業界情報の勉強にもなる

個別企業の事業や業績を知る以外にも、業界情報の勉強にもなります。たとえば、カゴメは決算資料の一環として自社製品が属する市場について商品ごとの市場規模を開示してくれています。野菜飲料の市場規模は2020年時点で1,563億円であり、2017年をピークに毎年その市場規模は小さくなっていることも分かります。

また、家電企業のエディオンの資料を見てみると、家電と一言で言っても様々な商品があり、それぞれの販売状況が解説されています。たとえば、コロナ禍による巣篭もり・テレワーク需要でゲームや玩具、空調機器、パソコン関連商品が好調な一方で、前期の買い替えサイクルによる需要の反動で冷蔵庫は売れなかったことや、windows7の買替需要の反動で不調だったことなどが分かります。

クラウドワークスの資料を見てみると、2020年6月以降も週1日程度以上の在宅勤務を行っている企業が75%を超えるというグラフや、副業希望者が2020年時点で半数近くまで上昇していることなどが発表されていることから、今後も在宅勤務に関わる産業の市場規模は成長していくなどのシナリオも立てやすくなります。

財務諸表が重要なのは間違いないのですが、投資未経験者や初心者にとっては非常に馴染みにくい書類でもあります。急に財務諸表を分析するのではなく、まずは決算説明会資料を読むことでざっくりとその企業や、その企業が属する業界について学ぶことから始めてもいいかもしれません。

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