コロナ感染ステージ3 続く佐世保市 事業者の尽きぬ苦悩 飲食店PCR検査低調、宿泊割引見送り

閑散とした飲食店街。飲食事業者は「状況は切迫している」と訴える=佐世保市

 新型コロナウイルスの感染が収まらず、長崎県独自の感染ステージ3が唯一続く佐世保市。県内で6日までの10日間に感染が確認された56人のうち36人を佐世保市が占める。同市は6月から市街地周辺の飲食店などを対象に無料のPCR検査を始めたが、検査希望数は低調なままだ。1日から再開された県民限定の県内宿泊割引キャンペーンは、同市民と同市内宿泊施設への適用は見送られた。飲食、宿泊事業者の厳しい状況は続く。
 「もう少し多くの人たちに受けてもらえると考えていたが」。飲食店へのPCR検査について市の担当職員がこう漏らす。市内628店舗に案内を送付したが、希望数は7月5日時点で152店舗、450人にとどまる。市は「200店舗以上、600人以上の検査」を目安とし、6月18日だった申し込みの期限を今月9日まで延長。回答のない店舗へ再度、案内をしている。
 しかし、事業者にとって検査をするかどうかは悩ましい。「陰性の結果は利用者に『安心』を与えることになるが、もし陽性者が出たら店を休まないといけない」。佐世保観光料飲組合の牛島俊治常務理事は、事業者の声をこう代弁する。自身が経営するバーでは検査を受け、全員陰性だったが、結果が出るまで「正直怖かった」と話す。牛島常務理事は、休業要請などをした上で検査をする仕組みを提案する。
 同組合によると新型コロナの影響により、売り上げなどはコロナ禍前に比べ8~9割減少。廃業に追い込まれる事業者も出ているという。市内の居酒屋経営者は「第4波による落ち込みがこれまでで一番ひどい。佐世保市は時短要請などがなく、協力金がなかった」と窮状を訴える。感染者が減っても客足が戻るとは限らないと考えており「今からでも長崎でやったのと同じように時短要請をしてほしい」と話す。
 宿泊施設業界も気をもむ状況が続く。期待していたキャンペーンが佐世保だけ見送られ、市内のホテル関係者は「8月は夏休み、9月は修学旅行などで宿泊客が増える可能性があり、そのタイミングでの再開では意味がない。今が一番厳しい」。できるだけ早い再開を求めている。
 一方、米海軍佐世保基地を抱え、外国人客も多い佐世保の繁華街。同基地は6月23日、新型コロナウイルス感染防止のために実施していた基地関係者によるバーやクラブ、居酒屋などの利用制限を解除した。
 同市栄町で「ブルックリンビーチ」など外国人バー2店舗を営む久冨直樹さん(39)は「経営的にはぎりぎりだったので、助かった」と胸をなで下ろす。同店は客の7割が外国人。コロナ禍で基地関係者の立ち入りが制限されてから、毎月の売り上げは5分の1程度に落ち込んでいた。解除された日から基地関係者が飲みに来るようになり「コロナ前の状態に戻ってきている」。
 客が減り、昨年3月から休業していた別のバーは、週末のみ営業を再開した。ただ、今も日本人客は少なく、売り上げはコロナ前より少ないまま。やっと戻ってきた米兵も「佐世保の感染状況次第では、また入店禁止になるかもしれない」。街の感染状況がどう影響するのか不安は尽きない。


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