当店ではお取り扱いが

 買い物の途中に何かの在庫を尋ねてしばらく待たされた後に「当店ではお取り扱いがありません」と言われたような感じに似てる…と不出来な例え話を思いついて、違う違う、と自分でダメ出ししながら書いている▲レジの横で何分か待つのと一緒にできるわけがない。それに“店員さん”がちっとも申し訳なさそうにしていない。集団的自衛権の行使を可能にする安全保障法制の違憲性を県内の被爆者らが問うた裁判の判決が5日、長崎地裁で言い渡された▲平和に暮らす権利を侵害された、とする原告の訴えは退けられ、安保法制が合憲か違憲かはノーコメント。5年がかりでゼロ回答だ▲〈裁判所は具体的事件を離れて抽象的に政府や国会の行った行為などの違憲、違法について判断する権限を有しない〉と判決にある。この部分は「司法権」の定義から導かれる伝統的な見解で、学説にもほぼ争いはないが▲もし政府や国会が憲法について何か“思い違い”をしたり、憲法を無視して暴走を始めたりしたら、誰が止めるのだろう。国の機関で考えるならやっぱり裁判所しかない▲憲法のどこをどう読んだって集団的自衛権なんか絶対に出てこない…一人ぐらいそんな判決を書く店長、いや裁判長がいても何の不思議もないと考えていた。今もそう考えている。(智)

© 株式会社長崎新聞社