歓楽街、客足の戻り鈍く 長崎市 時短解除から1カ月 続く自粛の意識

5人の客を前に、思いを込めて踊る真行寺さん(中央)ら=5日午後10時32分、長崎市のフェアリー

 新型コロナウイルス感染「第4波」を受け、県が長崎市内の飲食店に出していた営業時間短縮要請が解除され8日で1カ月が過ぎた。感染者数は落ち着いたものの、県や一部の企業は引き続き飲み歩きなどの自粛を促しており、歓楽街、特に2次会場となる店の客足の戻りが鈍いようだ。苦境が続くショーパブを訪ねた。
 5日午後10時すぎ、同市浜町の「フェアリー」。照明の色が次々と切り替わり、着飾ったママの真行寺友子さん(53)ら4人のニューハーフが舞う。Jポップや歌謡曲に合わせて、あでやかに、軽妙に。真行寺さんが振り付けや選曲を手掛ける1回約40分のショーが目玉だ。コロナ禍前の週末は立ち見が出るほど人気だった。
 それが今では、売り上げが前年の1割に満たない月もある。この日の来客は男女5人。拍手を浴びたスタッフ、さらさん(32)は「1人でも真剣に見てくれるなら、やりがいを感じる。でも人に見せるため練習を積んできたから…」と寂しそうな表情を見せた。
 「もし、うちの店でクラスター(感染者集団)が起きれば、小劇場など含め全国の同業者に迷惑をかけてしまうかも」。真行寺さんはそう考え、時短要請期間の4月28日~6月7日は休業した。営業再開は6月16日まで待った。混雑を避けるためだったが、今その心配はない。「感染対策上、席を埋めるわけにもいかないしね」と苦笑いする。
 周辺の夜の人通りはまだ回復していない。スマートフォンの位置情報を活用したソフトバンク子会社Agoop(アグープ)のデータ分析によると、今月5日午後9時台の浜町・銅座町エリアの人出は感染拡大前(2020年1月18日~2月14日の平均)と比べ、約4割減ったままだ。
 県は時短要請解除後も「会食時の感染リスクが高い」として、普段一緒に過ごす人と短時間で済ませ、複数店舗の飲み歩きを控えるよう呼び掛けている。これに県職員が従うのはもちろん、社員の会合に対し、同僚や家族など顔触れや人数の制限、あるいは社員同士の開催禁止など、自粛を続けている地場大手企業もある。
 浜町のバーの男性店主(54)は「自粛が長期化する中で、みんな自宅で楽しむ方法を見つけたのだろう」。同町かいわいで客待ちをするタクシー運転手の男性(70)も「なかなか車列が動かない」とため息をつく。
 フェアリーでは、常連客だった医療福祉従事者らの姿をまだ見ないという。「お客さんがいてショーは成り立つもの」。県の自粛要請について、真行寺さんは客を守るために必要と受け止める。入場人数を半減し、フェースガードを付けて接客しながら「ショーパブは生きていく上で必須のものでないから、お客さんが帰ってくるのは最後の方だと思う」と半ば覚悟する。ただ、中には「応援」として店に書き留めでお金を送ってくれた客もいた。だから「以前のにぎわいが戻るのを信じる」。

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