<レスリング>「夢や目標にチャレンジさせてもらえるのは、とてもありがたい」…井上謙二・男子フリースタイル強化委員長(自衛隊)

 

オンラインで報道陣の取材を受けた井上謙二・男子フリースタイル強化委員長(自衛隊)

 東京オリンピックの男子フリースタイル監督を務める井上謙二・同強化委員長(自衛隊)は7月9日、オンラインで報道陣からの取材を受け、前夜に決まった無観客大会について、「残念だが、これまでやってきて、夢や目標にチャレンジさせてもらえるのは、とてもありがたい。コロナできつい状況にある中、多くの人の理解のもとでオリンピックが開催される。そのことを感謝し、そうした人たちに何かしらを届けることができればいいと思う」と話した。

 この日の練習でも、選手に「気持ちを切り替え、前を向いて行こう」と伝えたという。選手は、家族や恩師、支援してくれる人に晴れ舞台を見てもらえないことに、やや寂しそうな表情もあったそうだが、「やるべきことをやる」という気持ちが見てとれたと言う。

 大歓声の中での試合では、セコンドの声が届かないときもあるそうだが、無観客の大会ではしっかり届くというメリットもある。決まったことを悲観するのではなく、プラス面を見つけ、前を向く姿勢を示した。

 無観客の国際大会としては、4月のアジア予選(カザフスタン)と5月の世界最終予選(ブルガリア)を経験した。その中で、海外選手のコロナに対する意識は、“低い”というか、日本が特に高いことを感じている。最初のカザフスタンでは、ウォーミングアップ場でマスクなしだったり、密集してビニール手袋なしの食事風景だったりを何度も目撃したという。その結果が、韓国選手団で大量の陽性者が出るなどだった。

4月のアジア予選、マスクなしでモニターを見つめる外国選手達=撮影・布施鋼治

 ただ、そうした情報が伝わり、最終予選では手袋の着用がしっかり義務付けられ、スタッフが注意することも多くなっていたという。最終予選で感染者が出た、というニュースは伝わっていない。「UWW(世界レスリング連盟)も多くの情報を得て、試行錯誤で感染対策に取り組んでいると思います。日本の運営も、こうした情報を得ているはずなので感染対策をしっかり実行に移してほしい」と要望した。

 男子フリースタイルの目標を問われると、「最も高い目標は、全員が金メダル」と即答。ただ、勝負の世界はそう甘くないことも知っており、現実を見据えた目標は「金2個を含む全員がメダル」と言う。それでも、どの階級の代表選手も金メダルを取る実力を持っていると思っており、「全員金メダルを目標に頑張りたい」と強調した。

 海外での大会は、時差、気候、環境など、行ってからしか分からないことが多い。それがないのは「母国開催の強み。調整はしやすい」と話し、地元の利を使っての好成績を誓った。

 

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