鷹・柳田悠岐が語ったもどかしさ 1か月ぶり本拠地勝利を呼んだ決勝弾に込められた想い

ソフトバンク・柳田悠岐【写真:藤浦一都】

柳田の勝利への渇望「勝ちたいという気持ちだけでプレーした」

■ソフトバンク 3ー1 オリックス(10日・PayPayドーム)

ソフトバンクは10日、オリックス戦に3-1で勝利し、約1か月ぶりに本拠地PayPayドームで白星を挙げた。1点ビハインドの3回に主砲の柳田が右翼スタンドへ逆転の19号2ランを放ち、これが決勝弾に。本拠地では6月9日の広島戦以来の勝利だった。

「勝ちたいという気持ちだけでプレーしました」。柳田の勝利への渇望がバットに込められた。3回。2死から三森が粘って中前安打で出塁。走者が出て、もっとも頼りになる男に打順が巡ってきた。

「三森が出て回してくれた。気持ちで打ったように見えて、なんとかしたいと思った。自分のスイングをしようという思いが強くなった」

天敵の山崎福が投じた、肩口から入ってくるスライダーを逃さなかった。「全く狙ってませんでした。高めに浮いてきたので反応で。先っぽだったけど、振り切れたので」。快音を残した打球は本拠地のファンが待つ右翼スタンドへ。勝利に直結する19号逆転2ランとなった。

本拠地で6月9日以来の白星「勝つのは難しい」

苦戦が続くソフトバンク。6月9日から丸々1か月、本拠地での白星がなかった。その間は6敗3分。9日のオリックス戦に敗れて、ついに借金生活に突入してしまった。本来、強いはずの本拠地で勝てない。じわりじわりと離れていく首位オリックスの背中。主砲として、忸怩たる思いがあった。

柳田自身も本塁打を打つのは6月24日のロッテ戦以来、12試合ぶり。奮闘続く投手陣をなかなか援護できず、チームを勝利に導けていない。チームの屋台骨として責任を感じていた。「どうやったら勝てるのか。本当に勝ちたいという気持ちだった」。勝ちたい――。チーム全体の思いが込められたアーチだった。

この日のスタメンには1番に三森、6番には真砂、7番には野村と若い面々が並んだ。「若い選手は自分のことで一生懸命。そういう選手のためにも、自分が結果で見せないといけないと思っている」。勝敗の責任を負うのは主力の役目。先輩たちがそうだったように、今、柳田もその責任を自分に課す。だからこそ、この日の1本に安堵の表情が浮かんだ。

久々の本拠地での勝利。試合後はベンチ裏で勝利のハイタッチを繰り返した。「勝つことが1番、チームみんなが喜べること。勝たないと面白くない」。苦しむチームにとって白星が何よりの良薬になる。「みんな一生懸命やってるんで、誰がとかそういうのはないですし、一生懸命やっているんで、1個1個勝っていくことが大事と思っています」と柳田は言う。

チームは1日で勝率5割に戻し、オリックスとの差を4.5ゲームに詰めた。前半戦は残り4試合。「相手もプロなんで甘くない。その中で最大の準備をして、自分ができる最高のプレーをやるだけだと思います。やっぱり勝つのは難しいなと感じています」。柳田の視線は目の前の1試合にだけ向いている。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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