〝常勝〟の雰囲気漂うオリックス 96年以来のリーグVへ浮かれムードなし

いい意味での緊迫感が漂うオリックスベンチ

【広瀬真徳 球界こぼれ話】プロ野球は東京五輪が開催されるため今週中から、公式戦が中断する。前半戦、パ・リーグを振り返ると何が印象的だったか。個人的には「オリックスの躍進」がやはり真っ先に頭に浮かぶ。

当コラムでも以前書いたが、今季のオリックス浮上は何となく予想ができた。エース格の山本を中心とした豪華先発投手陣。打線の中軸には昨季リーグ首位打者の吉田正も君臨する。若手の成長とともに昨季途中から就任した中嶋監督の野球もナインに浸透し始めていた。このチーム状況に、親しいオリックスの球団職員は「故障者続出などがなければリーグ3位に入る可能性はある」。控えめながらもチームの手応えに自信をのぞかせていた。

それがいざ、シーズンが進むとどうか。山本、吉田正の投打の両輪の活躍はもとより、高卒2年目左腕の宮城が前半戦だけで9勝(11日現在)と大ブレーク。打者でも2015年ドラフト10位の杉本が吉田正と首位打者を争う覚醒ぶりを見せている。4年目の福田や7年目の宗も着実に成長。シーズン序盤から不安定だった救援陣もメジャー帰りの平野を中心に6月以降、何とか持ちこたえている。救援陣の不安はいまだ残るとはいえ、チームとしては2年連続最下位からの首位争い。及第点どころか出来過ぎだろう。

そんなオリックス。五輪中断後も躍進を続け1996年以来となるリーグ優勝を果たせるのか。現場を見る限り可能性はあると見ている。理由の一つが「チーム周辺の雰囲気」だ。

予想外の快進撃を見せるチームは選手ではなく、まず球団職員やチームスタッフが真っ先に「浮かれる」傾向にある。こうした周囲の高揚が選手の足を引っ張り、最終的にチーム急降下を招く光景を過去の取材で何度も目の当たりにしてきた。

だが、今のオリックスにはそれがない。ベンチ内こそ明るいものの、裏方や関係者の多くは「まだまだ」と後半戦に向けて警戒感を強める。まるで常勝チームのような冷静な対応。こちらが逆に「かん口令でも敷かれているのか」と思ってしまうほどだ。

2日の西武戦前、チームに帯同するオリックス職員の一人に話を聞いた際もこう気持ちを引き締めていた。

「ウチはもう何年もBクラスに沈んでいる。今季前半戦だけの結果だけで喜んでいる場合ではないでしょう。その思いは球団全体で共有しているつもりですから。本当の戦いはこれからですよ」

後半戦を前にいい意味での緊迫感が漂うオリックス。この空気感ならひょっとしたら…ひょっとするかもしれない。

☆ひろせ・まさのり 1973年愛知県名古屋市生まれ。大学在学中からスポーツ紙通信員として英国でサッカー・プレミアリーグ、格闘技を取材。卒業後、夕刊紙、一般紙記者として2001年から07年まで米国に在住。メジャーリーグを中心にゴルフ、格闘技、オリンピックを取材。08年に帰国後は主にプロ野球取材に従事。17年からフリーライターとして活動。

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