ウインブルドン閉幕

 「これ、何年か前の再放送?」-誰かのこんな感想を見つけた。女子はアシュリー・バーティ選手の初優勝、男子はノバク・ジョコビッチ選手の3連覇で幕を閉じたテニスのウィンブルドン選手権。何が再放送に見えたか、というと▲画面で見る限り「あれっ? ソーシャルディスタンスは?」と心配になるレベルで、観覧席はぎっしり埋まっていた。マスク姿も何だか少数派で、熱いラリーにはもちろん歓声が上がる。なるほど2021年7月の出来事には見えにくい▲少なくとも、ロンドンの郊外だけが一足早く新型コロナに打ち勝ったとか、日常を取り戻した-という事情はない。英国内では今も数千人単位で連日、新規感染者が増えている▲観客にはワクチンの接種証明や迅速検査の陰性結果が要求され、選手は期間中「バブル」の中で過ごす取り決め。大会の途中から入場制限が解除された▲主催者の選択が正しかったのかどうかは即断できない。ただ“いつものウィンブルドン”で開催することは、選手への敬意のように思えるし、伝統を守る覚悟も感じる。何より、大会の活況は理屈抜きにまぶしく、うらやましい▲東京五輪は大半の競技が無観客で実施されることが固まった。空っぽの競技場はニッポンのどんな今を世界に語るのだろうか。心配だ。(智)

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