単価低迷、出荷先減少…コロナ禍の農畜産物の生産現場 にじむ疲弊感

カーネーションの出荷を終え、アルストロメリアの栽培に励む後田部会長=諫早市飯盛町

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響が、本県の基幹産業の一つである農畜産物の生産現場で続いている。単価の低迷や出荷先の減少が背景にあり、産地は「いつまで持ちこたえきれるのか」と疲弊感がにじみ出ている。

 長崎県内有数の花の産地、諫早市飯盛町。若い後継者が育っている産地にも、新型コロナの“逆風”が昨年春以降、直撃。歓送迎会、「母の日」商戦、結婚式、葬儀-。いずれも自粛や規模縮小が続き、それぞれを彩る花き類の需要が大きく落ち込んでいる。
 JAながさき県央諫早カーネーション部会(7戸)の栽培面積は約350アール。取り扱い品種はカーネーションのほか、ラナンキュラス、ガーベラなど季節に応じて生産。同部会によると、昨年の出荷本数、売上高いずれも前年比約1割減少した。
 国のまとめによると、切り花の卸売価格は昨年4月、直近5年間の平均価格よりも2割超下落。その後、回復基調に戻ったが、今年1月に発表された2度目の緊急事態宣言以降、イベントなどの再自粛で価格が低下しているという。
 ビニールハウスの温度管理に必要な燃料代もかさみ、多いときで月100万円を下らない。燃油が高騰すれば、さらに負担がのしかかる。新型コロナに伴う国の減収補塡(ほてん)制度を活用してきたが、生産者たちは先行きが見えない状況に疲弊感を漂わせる。
 同部会の後田隆英部会長(38)は、輸入ものや小売店の動向次第で需要が変動する現状を冷静に分析しつつ、継続的な国の支援と制度の改善を指摘する。「今は何とかしのいでいるが、経営が苦しいのは変わらない。実際に減収が補塡されるのは申請から時間がかかり、必要なときの運転資金として使えるよう、手続きの簡略化とスピードアップができたら助かる」

© 株式会社長崎新聞社