7回12Kも意外な第一声「三振を取りづらいなと思いました」
青いスタンドは日本海を表し、客席の上の白い楕円の屋根は県の名産品「あきたこまち」を表す。秋田を象徴するこまちスタジアムのマウンドに、ノースアジア大明桜の風間球打投手(3年)が立った。11日に行われた全国高校野球選手権秋田大会、2回戦の能代戦で、この秋のドラフト1位候補ともいわれる右腕は7回を被安打2、12奪三振無失点と、圧倒的な投球を披露した。
「正直、三振を取りづらいなと思いました」
7回で12個の三振を奪った風間だが、最初に発した言葉は意外な一言だった。理由は、直球狙いの能代打線にあった。
「向こうが直球狙いで来ているのはわかっていて、2巡目からは徐々に合わされて粘られているなという印象でした」。最速153キロの直球が武器の風間にとって直球を狙われるのは必然。4回までに9つの三振を奪うも、5回、6回は三振は0。5回には粘られ、3つの四球で1死満塁のピンチも招いた。
ただ、多少直球をカットされたところで、動じないのが風間。そこにドラフト1位候補と呼ばれる理由がある。
この冬から強化した変化球を多用、スカウトも「調子に関係なく抑えられる」
武器の速球を生かすために、この試合では緩急を駆使した。輿石重弘監督から「チョップをするように」と指導を受けたスライダーや、レイズのタイラー・グラスノー投手の縦に割れる軌道を意識したカーブなど、冬から強化してきた変化球を多用。能代打線に的を絞らせなかった。その投球の変化に、詰めかけたスカウト陣も舌を巻く。
「プロでもやっていける力はある」。そう断言するのは、DeNA・欠端光則スカウト。「スライダー、カーブ、フォークと、多彩な変化球を投げ分けていた。5回のピンチもうまく打たせて取っていた。プロになると足を絡めるなど色々なことを仕掛けてくるが、そこに対応できるセンスはある」と太鼓判を押した。ソフトバンク・作山和英スカウトも「ここまで5回以上見てきたが良くなっている。調子に関係なく抑えられる。考えてやっている印象」と成長を評価する。
4回1死二塁のピンチでは自己最速タイの153キロをマークするなど、力の投球で6番・秋元、7番・加藤を2者連続三振に仕留めた。続く5回は一転して変化球を多用し、打たせて取る投球にチェンジ。1死満塁を遊飛と左飛でしのぐなど、試合の中で投球スタイルを変える“野球脳”の高さも見せつけた。
多くのスカウトから高い評価を受ける右腕だが、現在の目標は甲子園のマウンドに立つこと。「自分が無失点で抑えて、チームを盛り上げていきたい」。風間の最後の夏が、幕を開けた。(川村虎大 / Kodai Kawamura)