「イケてる球技」ボッチャを全学校に広めたい! 学習塾「花まる学習会」高浜正伸代表の夢

「花まる学習会」の高浜正伸代表=4月30日、都内

 老若男女も、障がいがある人も対等に戦える球技で、パラリンピック正式競技の「ボッチャ」。さまざまな大手企業がパラにも支援の輪を広げる中、幼児から小学生が通う学習塾「花まる学習会」は、日本ボッチャ協会のメインスポンサーとして競技を支える異色の存在だ。1993年の塾設立当初から車いすの講師が在籍し、障がいのある子どもを受け入れてきた高浜正伸代表(62)が共同通信のインタビューに応じ、頭脳戦の「イケてる球技」と表現するボッチャを全学校に普及させる夢と、8月24日開幕の東京パラリンピックへの思いを語った。(共同通信=田村崇仁)

 ▽理想型はドッジボールやボウリング?

 ボッチャはイタリア語でボールの意味。重度の脳性まひや四肢の重度機能障害者のために欧州で考案され、電動車いすを使用する選手も多い。赤と青の球を交互に6球ずつ投げ、白の目標球にどれだけ近づけるかを競う。

2020年11月、東京・JR西日暮里駅の「エキラボniri」で、駅員とボッチャを楽しむ子ども

 ―花まる学習会は、協会の活動を支援するほか、社員がチームを結成して大会に出場したり、親子で参加できる大会を開いたりと盛り上げ役も担っている。スポンサーになった経緯は?

 「10年ほど前、わが子(脳性まひの長男丈太朗さん)が通う特別支援学校で観戦し、障害の人と健常の人が本当に対等に戦える唯一のスポーツだと感じた。最後の1投まで分からない真剣勝負。ボッチャこそは小学校や特別支援学校との交流を含め、互いの心の壁を溶かす共生社会への切り札になると直感した」

リオ・パラリンピックで銀メダルを獲得した日本代表=2016年9月、リオデジャネイロ(共同)

 ―普及させるための課題は。

 「全国の小学校で定着しているドッジボールや、若者がデートで行くボウリングのようになるのが理想。高齢者も子どもと一緒にやれるし、一緒に遊ぶのが一番いい。施しを与える関係では駄目。そういう意味でボッチャは最高。ただ、もっと学校で広めたいのに、ボールを1セットそろえるのに高額なのがネックだ」

 ▽見るだけでなく、やるスポーツに

 ボッチャは戦略性が高く一発逆転もある頭脳戦で「地上のカーリング」とも呼ばれる。タイを筆頭にアジア勢が強く、日本代表「火ノ玉ジャパン」は2016年リオデジャネイロ大会で銀メダルを獲得。東京大会では個人も含め、悲願の金メダルを狙っている。

 ―新型コロナウイルス禍で五輪パラの価値はどう変わったと思うか。

 「質素でもいいけれど、スポーツって感動的だよね、という原点に戻らないと。スポーツ自体はすごい力があると思う」

有明西学園の児童と記念写真に納まるボッチャ日本代表の杉村英孝選手(中央右)と広瀬隆喜選手(同左)=2019年3月、東京都江東区

 ―開催反対の声もある中、東京大会の意義は。

 「1964年の東京五輪は国を挙げたインフラ整備で高速道路や新幹線が誕生し、戦後復興の象徴となった。今の時代は多様性。パラにこそ、すごく可能性を感じている。ボッチャを見るだけでなく、やるスポーツとして盛り上げることで、障害者を見る目が変わり、社会で普通に接するきっかけになればいい。学校という場所で定期的に開催され、甲子園レベルで広がることを目指したい」

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 たかはま・まさのぶ 学習塾「花まる学習会」代表。数学的思考力、読書・作文が中心の国語力、野外体験を重視する独特の教育理念や学習法で注目される。日本棋院理事、算数オリンピック作問委員も務める。東京大農学部卒。熊本県出身。62歳。

合宿を公開したボッチャ日本代表=6月、福島県白河市

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