母国戦連覇狙うタナク「今年も優勝争いができることに期待」/2021WRC第7戦エストニア 事前コメント

 7月15~18日、WRC世界ラリー選手権第7戦エストニアが行われ、このラウンドからチャンピオンシップは2021年シーズンの後半戦に突入する。そんな今戦『ラリー・エストニア』を前に、最高峰カテゴリーであるWRCクラスを戦うMスポーツ・フォード、ヒュンダイ、トヨタの各陣営から今ラウンドに出場するドライバーたちの事前コメントが発表された。

 新型コロナウイルスの影響で、日本のラリージャパンをを含む多数のイベントが延期や中止を余儀なくされた2020年シーズンに、WRCイベントとして初開催されたラリー・エストニアは、ヒュンダイのWエースの一角であり2019年王者オット・タナクの母国ラリーということもあり、昨年の大会は大きな成功を収めた。

 そのエストニア戦が今シーズンもWRCの1戦として開催される。『ラリー・フィンランド』によく似た、速度域の高いグラベル(未舗装路)ステージが数多く設定されるラリーの拠点となるのは、昨年と同じくエストニア第2の都市タルトゥにあるエストニア国立博物館の敷地内だ。

 競技初日の15日(木)は、そのサービスパーク近くでスーパーSS形式のステージが1本行われる。翌16日(金)のデイ2から本格的なラリーがスタート。この日はサービスパークの南側エリアで、前回大会でも使用された4本のステージを日中のサービスをはさんで午前と午後で2回ずつ走行する。

 一方、9本のSSで争われる土曜日のデイ3は、初日のスーパーSSの再走ステージとなるSS18を除き、4本のステージ(SS10~17)が新設定のSSだ。こちらも前日と同じく、午前と午後に分けて2回ずつ走行する。

 18日(日)の最終日は、3つのステージを日中のサービスなしで各2回走行する予定が組まれ、この内サービスパークに隣接する場所で行われる最終SS24は、トップ5タイムを記録したドライバーとマニュファクチャラーにボーナスポイントが与えられる“パワーステージ”となっている。

 4日間にわたって争われる24本のSSの合計距離は、前年大会から80km以上も長い314.16kmとなり、リエゾン(移動区間)を含めたラリーの総走行距離は1299.25kmとなる。

■Mスポーツ・フォードWRT

●ガス・グリーンスミス(フォード・フィエスタWRC)

「ケニアは抜け目のないように賢く状況を切り抜け、ペースを維持することがすべてだった。対してエストニアは最初から全開で、ラリーの最後までそのまま全開で進むことが重要だ」

「僕は高速のラリーでは、望むほど速くなれていないとはいえ、いつも順調に進める傾向がある。でも僕とテーム(・スニネン)の間では良いテストができたし、マシンをよりドライブしやすく、動きが予測できるものにできたと信じている」

「昨年のオンボード映像を見てみると、タイムを失っていたのは、たいていが大きくスライドしたときや、マシンからベストな性能を引き出すことに苦戦してミスをしたときだった。だから変更は役に立つはずだ」

「今年初めにエンジンのアップデートが行われたということは、より速いトップスピードが出るということだ。小さな変更だけれど、トップエンドスピードがエストニアでは必要だ」

「だから昨年よりもいっそう競争力を発揮できるだろうと期待している。ケニアの後で、明らかにチームにみなぎる自信は高い。トップ6という結果は、エストニアでは現実的な目標だ」

●テーム・スニネン(フォード・フィエスタWRC)

「このラリーはいつも気に入っている。チャレンジングなステージだけれど、超高速だから、フィンランドとどこか似ているところがあるね。スピード面では似ているけれど、エストニアではクレストとジャンプが少ない。しかし、かなり多くの人工のジャンピングスポットがある。どれだけ遠くにジャンプできるか予想するのが難しいんだ」

「フィンランドと比べると、路面は砂が多い。自分の出走順のアドバンテージを活かせると思いたいし、昨年よりも良い結果を出せることを期待している。昨年はペース面で少し苦戦したが、1日半行ったテストが役に立つことを願っているよ」

「いくつかのテストを実施したから、WRカーのスピード感を取り戻すことに心配はない。なぜなら良いフィーリングを得ているし、空力についてもよく理解できているからね」

「それに、9月ではなく7月にこのラリーを行うことで大きな違いが生まれるとは思わない。多分タイヤを除けばね。午前中はソフト、午後はおそらくハードを履くだろう。高速ステージでは車内の空気の流れがかなり多いから、暑さは問題にならないはずだ」

Mスポーツ・フォードWRTのフォード・フィエスタWRC
ラリー・エストニアに向け、テストを行うフォード・フィエスタWRC

■ヒュンダイ・シェル・モビスWRT

●ティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20クーペWRC)

「ラリー・エストニアは、昨年は選手権再開後の最初のラウンドだったから、戻ることができるのはいいことだ」

「非常に高速なイベントで道幅は広く、多くのジャンピングスポットがある。実際、フィンランド以上に大きなジャンプを体験することになる」

「僕たちにとってチャレンジングなラリーになるが、オット(・タナク)からの意見とアドバイスがあるから、スピードが出せることを期待している。今シーズン多くのイベントでそうしてきたようにね」

●オット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC)

「ラリー・エストニアの全体的な特徴は、非常に高速かつ滑らかで平坦な道路だ。多くの人工的なジャンピングスポットもあるので、イベントの平均スピードはかなり速くなる」

「母国でドライブできるのは素晴らしいことだよ。昨年はヒュンダイ・モータースポーツでの初優勝を飾るという忘れられない結果を出したしね」

「今年も同様の結果を賭けて戦えることを期待している。あのようなコンディションでマシンが速く走れることは分かっているからね。僕にとってはロジスティクス的に楽なラリーだ。イベントへの行き帰りの移動が少なくてすむのは、いつだっていいものだ」

●クレイグ・ブリーン(ヒュンダイi20クーペWRC)

「僕にとってラリー・エストニアは、シーズン中でもっとも楽しめるラリーのひとつだ。昨年、ポール(・ネイグル/コドライバー)と僕は、キャリアのなかでも素晴らしい瞬間のひとつを体験した」

「僕たちは総合2位につけ、ヒュンダイはワン・ツー・フィニッシュを飾ったんだ。またあそこへ戻ることを楽しみにしている」

「信じられないくらい高速のステージがある素晴らしいラリーだ。今年も同じような結果を出せるよう願っているよ」

ヒュンダイは2020年WRC第4戦エストニアで、オット・タナクとクレイグ・ブリーンによるワン・ツー・フィニッシュを飾っている
母国ラリーでの連覇を狙うオット・タナク(ヒュンダイi20クーペWRC)

■TOYOTA GAZOO Racing WRT

●セバスチャン・オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)

「今シーズン、すでに4回も優勝していることは素晴らしいことだし、予想以上の結果だ。現在のWRCは競争が非常に厳しく、勝つのは大変なので、シーズン前半戦の結果にはとても満足していているよ」

「エストニアは簡単には勝てないラリーだし、特に出走順がトップの場合はなおさらだが、多くのポイントを獲得し続けるためベストを尽くして臨むつもりだ」

「ケニアに比べると路面がスムーズであることは確かなので、ドライビングに集中し、限界まで攻めることができる。ヨーロッパ北部のハイスピードなステージで限界に挑むのは簡単ではないが、きっとすべてのドライバーがそのチャレンジを楽しむと思う」

●エルフィン・エバンス(トヨタ・ヤリスWRC)

「僕にとってケニアは、選手権ポイントという点においてあまり良いラリーではなかったが、そのことは忘れ、次のエストニアではベストを尽くして戦う」

「ケニアにも、とてもハイスピードなセクションがあったが、エストニアはまったく異なるキャラクターのラリーだ。エストニアのようなステージでは、我々のクルマの良い部分を最大限に引き出すことができるし、そのような道でヤリスWRCをドライブする時は、常に素晴らしいスリルを味わうことができるんだ」

「基本的に、我々のクルマはハイスピードなセクションではとても速いのだが、昨年のエストニアでは100%の仕上がりではない部分もあったので、ラリー前のテストでは可能な限りクルマを改善し、できる限りの準備を行ってきた」

●カッレ・ロバンペラ(トヨタ・ヤリスWRC)

「エストニアのような高速ラリーは以前から好きだった。バルト諸国のラリーには何度も出場経験があるが、フィンランドと同じように高速で流れるような道が多く、自分にとても合っていると思うし、ヤリスWRCもそういった道が得意だ」

「このようなラリーでは、クルマと自分自身に自信を持って走ることがとても重要だし、それができないとタイムを大きく失ってしまう」

「シーズン後半は、状況を良い方向に変えて行きたいと思っているけど、エストニアはそのきかっけとなるイベントになるだろう。いいフィーリングでクリーンにラリーを戦い、ふたたび良い結果を残せるようにしたいと思っている」

フィンランドに似た高速グラベルラリーに対して自信を覗かせるカッレ・ロバンペラ(トヨタ・ヤリスWRC)
セバスチャン・オジエと34点差のランキング2位につけているエルフィン・エバンス(トヨタ・ヤリスWRC)

© 株式会社三栄