NASCARキャンピング・ワールド・トラック・シリーズで2018年に日本人オーナーとして初めてシリーズチャンピオンに輝いた服部茂章率いるHRE（Hattori Racing Enterprises）が、7月9日にアイオワ州のノックスビルで行なわれた第14戦をトヨタ・タンドラ駆るオースティン・ヒルの手により制し、2021シーズン初優勝を遂げた。
今回のノックスビルは、1周0.5マイルのダート・ショート・オーバルが舞台。4組に分かれて15周で争う形式となった予選、4組目に6番手スタートで出走した16号車『TOCHIGI／FUKUSHIMA TOYOTA TUNDRA』のヒルは2台をパスして4番手でチェッカーを受けると、ポイント獲得順により13番手で決勝レースのスタートを迎えた。
40周の第1ステージ、50周の第2ステージ、60周の第3ステージからなる150周の決勝レースは、9日20時にスタート。ヒルは着実にポジションを上げ、16周目には7番手にまで浮上する。その後は10番手前後に順位を下げ、9番手で第1ステージのチェッカーを受けた。
ピットエリアが狭いノックスビルでは全車一斉のタイヤ交換ができないため、ステージブレイクではレースが一時中断され、各チームには3分間という時間内に給油・タイヤ交換などの作業が許されるという変則的な対応が取られた。HREはここで給油とタイヤ4本を交換、空気圧調整を施し、コースに1台が留まったため10番手で第2ステージを迎えた。
スタートダッシュを決めたヒルは次々と前車をパスし、61周目には一気に2台を攻略して2番手に。そのままの勢いでトップ車両のインに入るが、不運にもここでイエローコーションが発出。
リスタートは2番手のためアウト側となるが、マシンの走行数が少ないアウト側はダートが踏み固められておらず、ヒルは柔らかい土に足を取られ失速してしまう。合わせて後続車からの接触も受け、13番手にまで順位を落として第2ステージのチェッカーを受けた。
第2ステージ後の3分間のブレイクでは給油とタイヤ交換、そしてリヤのショックアブソーバーの交換を行ない、コースに3台が留まったことからヒルは16番手から最終ステージへと向かった。
不利なアウト側からのスタートとなったヒルは、中団グループの混戦に巻き込まれ、20番手まで順位を下げる。その後は多発するクラッシュをギリギリのところで切り抜け、138周目に9回目のイエローコーションが出されたところで9番手にまで順位を上げると、そのリスタートでは一気に加速し4番手へと浮上。
ヒルはさらにスピードを上げ、146周目には2番手に。トップを射程圏内に捉えたところで11回目のイエローコーションとなり、勝負はオーバータイムへと突入した。
ここでもアウト側のリスタートを迎えたヒルはスタート後のターン1で順位を落とすも、後続車のクラッシュによりスタートやり直しという状況が2度続く。迎えた3回目のリスタートではトップのマシンと接触しながらもなんとかイン側を確保し、立ち上がりの加速で待望のトップへと躍り出るも、またしても後続車のスピンによりイエローとなってしまう。だが、アクシデント発生時にはすでにトップに立っていたヒルは、優勝のかかるリスタートをトップで迎えることとなった。
ここで好スタートを決めたヒルは後続を引き離し、そのまま待望の今季初優勝を飾った。イエローコーション14回、オーバータイム4回の荒れたレースを土壇場の逆転劇で制した格好となった。
なお、HREは前戦ポコノにおいてプレイオフ進出を決めているが、今回の優勝でランキング2位に10ポイント差にまで迫り、プレイオフでの戦いをさらに有利な状況へと導くことに成功した。
「2018年にシリーズチャンピオンを獲得した体制を継続し、オースティンを走らせて3シーズン目の今季は、あと少しのところでうまく歯車が噛み合わずにいましたので、今月から思い切ってメンバーの入れ替えを行ないました」と服部チーム代表はコメントしている。
「そのことが直接結果につながったとは思いませんが、チームにとって大きな刺激になったことは間違いありません」
「すでにポイントによりプレイオフ進出の権利を獲得していますが、優勝してプレイオフに進出することはチームにとって非常に大きく、後半戦の戦いに向けて重要な勝利になったと思います」
「次戦がレギュラーシーズン最後のレースですが、引き続きチャンピオン奪回を目指し全力を尽くします」
