産業革命遺産 朝鮮半島出身者の強制労働 「説明不十分」の決議案に賛否

 世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」を巡り、朝鮮半島出身者の強制労働に関する説明が不十分として、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が公表した日本政府施設の改善を求める決議案に対し、端島(軍艦島)など構成資産を抱える長崎市内の関係者からは13日、賛否の声が上がった。
 改善を求められたのは、政府が開設した「産業遺産情報センター」(東京)の展示内容。
 端島の元島民で「真実の歴史を追求する端島島民の会」の加地英夫会長(88)は「納得できない」と憤る。島での生活を振り返り「強制労働はなかった。だから具体的な展示はできないのではないか」と強調。展示内容に韓国が「歴史的な事実を歪曲(わいきょく)した」と反発している点について、加地会長は「それはどの部分なのか徹底的に検証すべきだ」と疑問を投げ掛けた。
 「出るべくして出た勧告」と語るのはNPO法人岡まさはる記念長崎平和資料館の新海智広副理事長(65)。韓国など関係各国と協議した上で、全体の歴史が分かるよう展示を見直すべきと主張。日本政府に対し「きちんと受け止めてほしい。これをきっかけとして、光と影の歴史的事実を世界の人々に発信を」と求めた。
 一方、市世界遺産室は「(決議案を議論する)世界遺産委員会の結果を待つしかなく、現時点でのコメントは差し控えたい」とした。

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