【インタビュー】九州弁護士会連合会理事長 森本精一さん(59) 司法過疎問題解消を

森本 精一さん

 〈4月に九州・沖縄8県の弁護士会でつくる九州弁護士会連合会=九弁連、会員2758人=のトップに就いた。長崎県からの就任は9年ぶり。取り組みたい課題やコロナ禍で注視する点などを聞いた〉

 -理事長として取り組みたい課題は。
 司法過疎問題の解消は一番のテーマ。日本司法支援センター(法テラス)と日本弁護士連合会(日弁連)の公設事務所開設で、地裁や地裁支部があるのに弁護士がゼロか1人しかいない「ゼロワン地域」は解消されたとなっているが、公設事務所は2、3年の任期で交代するため、供給源がしっかりしていなければ途絶えてしまう危険がある。特に本県の離島、壱岐と対馬が問題。九弁連では司法修習を終えた新人弁護士を養成し弁護士不足の地域に送り出す「あさかぜ基金」を創設。福岡県弁護士会が養成事務所を運営しているが、思うように採用ができていない。安定的に人材を送り出せるようにしたい。

 -コロナ禍で注視する点は。
 感染者や医療関係者への偏見差別は大きな問題。九弁連では昨年12月に偏見差別・人権侵害の防止を求める理事長声明を出し、日弁連でも電話相談を実施している。引き続き取り組んでいきたい。

 -事件を起こした18、19歳の厳罰化を図る改正少年法が先月成立した
 家裁から検察官に送致(逆送)し、20歳以上と同じ刑事手続きを取る対象事件が拡大されるが、改正の根拠となる少年犯罪の急増や凶悪化といいった事実はない。民法の成人年齢引き下げに合わせたものだが、成長発達途上にあって可塑性(かそせい)(変形しやすい性質)を有する少年に応じた更生手段を本来は取るべきだ。厳罰化する意味は何なのか、あらためて問われないといけない。禁じられていた実名報道も起訴段階で解禁されるが、社会復帰に支障が生じることになり、慎重な対応が必要だ。

 -長崎刑務所と社会福祉法人南高愛隣会(諫早市)が受刑者の再犯防止推進で連携するなど、刑事司法に福祉的視点を取り入れていく動きがある。
 刑務所での刑罰の執行の在り方は本来、更生改善であるべき。刑期を終え、社会に放り出したところで、社会復帰に必要な手だてがないままでは再び罪を繰り返してしまう。福祉的な支援が本人の更生改善に役立つのであれば取り組むべきだ。そうした取り組みが長崎で進んでいることは誇らしい。

 【略歴】もりもと・せいいち 島原市出身。中央大法学部卒。東京での弁護士活動を経て、1994年に県弁護士会に登録。同会副会長などを歴任し、2011年4月から1年間会長を務めた。趣味はアコースティックギター。

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