末期症状

 「普通に考えればおかしい。(秘書官には)放っておけばいい、と言った」。自身の対応をこう説明したのは麻生太郎財務相兼金融担当相。いくら何でもそんなことができるものか-と考えたのだとしたら、その感覚自体はとても健全だ▲しかし、当事者意識が欠片も感じられないのはいったい何なのか。誰もが認める内閣の重鎮。「おかしい」と気づいたのなら、きちんとその場で止めればいい。それが止まらない▲数え上げればキリがない政府の「コロナ関連迷走」の中でも、一、二を争う大失態かもしれない。酒類の提供停止に応じない飲食店への対応に頭を痛め、金融機関や販売事業者を介した働き掛けを思いついたが、厳しい批判を受けて撤回に追い込まれた一件▲物資の供給路を断つのは戦国時代から変わらぬ“必勝法”の一つではあるだろう。だが、酒の提供を続ける店は、言葉を尽くして説得すべき相手ではあっても「敵」ではない。努力の方向性が違う。国民をカネやモノで締め上げる発想の暗さは夏なのに寒気がする▲ワクチンの接種券が少し前に届いた。予防接種が何もかもを解決してくれるかどうかは別として、ある種の節目や終わりは近づきつつあるのだと思いたいが▲延々と続く手詰まりと無策と平謝り。別な意味で末期的だと感じる。(智)

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