農産物直売所・越王の里(新潟市西蒲区)で地元の新ブランド「なないろ野菜」のフェアが開催

新潟市西蒲区で生産された「にしかん なないろ野菜」

新潟市西蒲区産業観光課とにしかん園芸作物生産協議会は16日から17日にかけて、農産物直売所・越王の里(新潟市西蒲区)で、2019年から栽培が始まった新ブランド「にしかん なないろ野菜」のフェアを開催した。「なないろ野菜」は名前の通り色と形に特徴を持ち、機能性への注目もあって県内外へ販路が広がりつつある。国や新潟県、新潟市が近年園芸政策を強力に推進する中、今後どのように展開するか注目だ。

西蒲区では「特色ある区づくり事業」の一環として、地元生産者によるにしかん園芸作物生産協議会を立ち上げ、2019年から「なないろ野菜」の栽培を開始。色鮮やかな「黄色かぶ」や「スイスチャード」、通常の品種とは異なる細長い形の「韓国かぼちゃ」など、特色ある野菜を年間50品種生産している。

16日と17日には、「7月16日(なないろ)」の語呂合わせにかけて越王の里で販売フェアを開催。旬の「なないろ野菜」約20品種が売り場に並び、生産者とにいがた観光親善大使の木村莉子さん、さらに西蒲区の鈴木浩行区長が野菜を紹介しながら販売した。また、地元割烹料理店が調理した惣菜の特別販売や、周遊バスによる区の紹介ツアーなど、生産から加工、観光を組み合わせたイベントとなった。

越王の里内の様子。16日にはレジを通過した人のカウントだけで420人を数えたという

今回のような販売フェアは、新型コロナウイルスの影響により開催の機会を奪われていたものの、2020年9月にはホテルニューオータニ長岡の池田喜三男シェフによるレシピ考案のイベントを、同年12月には朱鷺メッセ(新潟市中央区)で開催されたフードメッセに出店し県内外のバイヤーと商談の機会を得るなど、知名度の向上や販路の拡大を進めている。

一方で、生産開始からまだ日が浅いブランドであることから「生産量や需要の掘り起こしには課題がある」と生産者の1人である大岩年也さんと、区産業観光課の桑原勝俊主幹は口を揃える。「現状、知名度の低さもあって、数多く売れる野菜は限られている。定期的に買ってもらえる飲食店と仲良くしていければ一番いいが、流通や販売、生産体制の問題もあってなかなかできていない」(大岩さん)。

また、作り手の確保も課題の1つだ。元々米の需要が減少していたところにコロナ禍による外食産業の冷え込みも重なり、現在全国的に米から園芸への転換が急がれている。一方で、機械化・定型化が進んだ稲作から園芸作物へ転換することに踏み出せない農家が多いことは度々指摘されてきたところだ。

大岩さんは「(なないろ野菜も)元々野菜を作っていた人であれば、近縁の野菜から育て方を類推できるが、初めて野菜を作る人にとってはそうもいかない。我々も種苗会社の見学や、現地研修などを年に何度かやっているが、今後も続けていかなくてはいけないと考えている」と話す。

現在「なないろ野菜」の生産者は30人ほど。需要の拡大と生産増加のサイクルを回すため、まずは認知度の拡大が重要だ。

新潟市西蒲区の鈴木浩行区長

にいがた観光親善大使の木村莉子さん

大岩さんは「最近は我々だけでなく、『なないろ野菜という変わったものがある』と言ってくれる人が増えてきたし、欲しい野菜について要望や問い合わせが来るようになってきた。また、地元の飲食店などとの連携も生まれ始めている」と期待も示す。

そして今後については、「やはり、料理方法を知らないと買っていただけないことが多い。お客様に直接来ていただき、スタッフからどのように食べたら美味しいかを伝えたいし、もっと利用法を理解してもらえる方法を考えていきたい」(大岩さん)という。桑原主幹も今回の周遊バスや惣菜販売のように「区内にある岩室温泉など、観光や飲食へうまく繋げ、『稼げる農業』の確立や地域の魅力の発信をしていきたい」と語った。

近年、例えば隣接する燕三条地域の「工場の祭典」など、生産者と利用者が接することで製品の付加価値を高めていく動きが全国的に盛んだ。西蒲区の農業でも、人間性や地域性に回帰していく動きが地方の活性化に繋がることに期待したい。

(文・鈴木琢真)

にいがた観光親善大使の木村莉子さんも売り場での野菜の紹介に加わった

地元の割烹とコラボレーションした惣菜

売り場に並ぶ変わり種野菜

【グーグルマップ 農産物直売所・越王の里】

© にいがた経済新聞