【高校野球】敢えて投げた「少し抜いた直球」 “難敵”克服へ…プロ注目192cm右腕が見据える頂点

8回9奪三振と好投した静岡・高須大雅【写真:間淳】

静岡・高須大雅が夏の初戦に先発、8回3安打無失点の好投

全国高校野球選手権の静岡大会は17日、県内各地で2回戦が行われ、草薙球場では第4シードの静岡が7-0の8回コールドで浜名に勝利した。プロも注目する身長192センチの高須大雅(たかす・ひろまさ)投手(3年)は、8回を3安打9奪三振3四球の好投。最速145キロの直球を武器とする大型右腕は、“2種類の直球”で夏の大会を制するつもりだ。

初球に球場がどよめいた。最後の夏の初戦。プロ注目右腕にも力みがあった。エース高須が投じたのは、浜名の1番打者がのけぞる内角高めのストレートだった。マウンド上で汗をぬぐい、フッと息を吐く。頭と心を整えると、2球連続のファウルで追い込む。最後は自己最速まで1キロに迫る144キロの直球で見逃し三振に斬った。2番打者も2球で追いこみ、144キロの直球で空振り三振に。真夏の太陽が照りつける中、打者の反応を冷静に見ていた。

「直球についてこられていない。少し抜いた直球を混ぜていこう」

夏の大会で頂点に立つために、戦うのは相手や自分だけではない。投手にとっての“難敵”は、暑さと球数だ。甲子園常連校のエースとして、高須は1イニングでも長く、可能なら1人で投げ抜く覚悟を持っている。そのために新たな引き出しにしたのが「2種類の直球」だった。

打撃でも3安打を放った静岡・高須大雅【写真:間淳】

2種類の直球と精度を上げた変化球、打っては3安打「チーム引っ張っていく」

7割の力に抑えて低めに制球する第2の直球。走者を背負うまでは、130キロ台中盤の直球で内野ゴロを積み上げた。高須の代名詞は「身長192センチ」と「最速145キロ」。球速にはこだわりもあるが「以前なら1回の球速を見て、ガンガン力を入れて投げていたかもしれない。1週間で投げられる球数は決まっているので、できるだけ減らしたいし、体力も残していかないといけない」と直球に緩急をつける新しいスタイルを披露した。

唯一と言えるピンチでも、成長を見せた。2点リードの2回に、安打と盗塁で無死二塁を招いた。ここで浜名の5番打者を1ボール2ストライクと追い込みながら、三振を狙ったスライダーが真ん中に入って進塁打を許した。続く打者に四球を許して1死一、三塁。チームは1失点は想定した守備を敷いたが、高須は7番打者を2球で追い込むと、外角いっぱいのスライダーで見逃し三振に。バットを振らせなかった。

走者を背負ってからの投球が、高須の課題だった。今春の県大会では掛川西に準決勝で敗れた。3点リードの6回に3四球と2暴投。味方の失策も絡んで逆転を許して降板した。セットポジションになると球威が落ちることに加えて、直球も変化球も高めに浮いてストライクとボールがはっきりする弱点を露呈していた。2か月前から成長した姿を見せた高須。バッテリーを組む川端慶捕手も「変化球でストライクを取れたので余裕があった。修正、立て直しを春からの課題にしてきた」と手応えを口にした。

プロのスカウトから「体が大きいのに器用でセンスを感じさせる。大化けする予感がある」と評価を受けている高須。この夏は、2種類の直球と精度を上げた変化球で、1ランク上の投球を見せた。センスの良さは打撃にも。これまで8番で起用されることが多かったが、この試合は5番に“大出世”。1回に適時二塁打を放つなど、3安打をマークした。「自分がチームを引っ張っていくつもりでいる」。静岡で甲子園最多出場を誇る伝統校の中心選手として、プロ注目投手として、その力があることを証明していく。(間淳 / Jun Aida)

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