【高校野球】1年生で183cm、115kg 花巻東の“親子鷹”佐々木麟太郎が描いた今夏初の放物線

2回に2ランを放った花巻東・佐々木麟太郎【写真:荒川祐史】

岩手大会3回戦で2ラン「『伸びるな』という感覚はありました」

盛岡市三ツ割にある岩手県営野球場の夏空に、大きな放物線が描かれた。インコースのストレートをとらえて快音を残し、重力に逆らうかのように伸び続ける打球は、ライトスタンドの中央部分、緑鮮やかな芝生に勢いよく跳ねた。重量感たっぷりにダイヤモンドを回る彼は、高校に入学してわずか3か月余りの1年生。その名は、佐々木麟太郎という。【佐々木亨】

岩手県高校野球のパンフレットには183センチ、117キロと記されているのだが、実は夏の大会に入り、体重は2キロ減の115キロ。少しだけ体が絞られた。とは言え、その恵まれた体躯だ。左打席から放たれる打球は、1年生の領域を超えるばかりか、すでに全国屈指と言えるかもしれない。スイングスピードと打球速度は異彩を放つ。花巻東の「2番・佐々木」が、冒頭の一発を放ったのは岩手大会3回戦(花北青雲戦)、2回裏無死一塁でのことである。本人曰く「高校通算18本目」というビッグアーチは、公式戦では春季県大会の4本塁打に続く5本目のアーチ。夏の大会での初本塁打だった。試合後の佐々木は言うのだ。

「つなぐ意識のバッティング。(ホームランは)狙ってはいませんでした。ただ、打球にスピンがかかり『伸びるな』という感覚はありました」

花巻東・佐々木洋監督(中央)と佐々木麟太郎【写真:荒川祐史】

父の佐々木洋監督「休みの間に修正し、結果につながった」

監督であり、父親でもある花巻東の佐々木洋監督はこう語る。

「初戦(7月15日の高田戦)は、かなり力んでいるような感じはありましたが、(3回戦までの)休みの間に修正して、今日の結果につながったと思います」

2回裏の2ラン本塁打を含む3安打。夏空の下、いよいよエンジンがかかってきた佐々木は、打っても驕らず、足もとだけを見つめ、次戦の準々決勝に向けて言う。

「力を抜いて欲を出さずに、つなぐ意識のバッティングをしていきたいと思います。その中で、強い打球を求めていきたい」

自身にとって夏の大会1号は、あくまでも通過点。岩手の夏を彩る1年生スラッガーの進化は続いていく。(佐々木亨 / Toru Sasaki)

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