【高校野球】「東海大相模に行く可能性がある」 監督退任報道に戸惑いも…ナインが団結したワケ

原俊介監督が率いる東海大静岡翔洋は3-0で裾野に勝利【写真:間淳】

1回戦で裾野に勝利、タイムリーなしも手堅く3得点

全国高校野球選手権・静岡大会の1回戦が11日、県内10球場で行われた。元巨人の原俊介監督が率いる東海大静岡翔洋は、3-0で裾野に手堅く勝利。適時打はなく、2投手の完封リレーで逃げ切った。監督の去就を巡り、大会前に外野が騒がしくなった夏は、ナインの団結で初戦を乗り越えた。

合言葉は2つ。東海大静岡翔洋の夏が始まった。

「ともに甲子園へ」

「1日でも長く一緒に」

夏の大会が開幕する10日ほど前、野球部に衝撃が広がった。今春の選抜で優勝した東海大相模の門馬敬治監督が今夏限りで退任し、後任に原俊介監督が決定的となっているとの報道を聞いた。動揺するナインに対し「東海大相模に行く可能性がある」と伝えた原監督。「最後になるかもしれないこの夏、悔いを残さないように一緒に長くやろう」と語りかけた。

選手たちには、寂しさも驚きもある。ただ、思いは指揮官と同じだ。「一緒に戦うために勝ち進んで、原監督を甲子園に連れていく」。甲子園出場への決意を一層強くした。

敗退は、そのまま“別れ”を意味するかもしれない。原監督はベンチの最前列に立ち、マスク越しに選手を鼓舞。独特の緊張感がある難しい初戦にも、チームに気負いはなかった。学んできたこと、やるべきことに徹し、初回から原監督の意図を結果で示した。先頭打者が四球で出塁すると、2番が犠打を決めて二塁へ進塁。相手の暴投で三塁を陥れ、3番・落合昴天(おちあい・ほたか)内野手の内野ゴロの間にホームイン。原監督が試合のポイントに挙げていた先制点を、わずか8球、無安打で奪った。

さらに3回にも先頭打者が四球で出塁し、盗塁と2つの暴投で生還。7回にも四球に盗塁などを絡めて1死三塁の場面を作ると、落合が犠飛で加点した。「最低限でも外野フライ。緩い球を遠くへ飛ばそうと狙っていた」との言葉通りの役目を果たした。3得点はいずれも、相手のミスを突いて無安打で記録した。

3得点はいずれも相手のミスを突いて無安打で記録【写真:間淳】

報道に驚いたナイン「絶対に原監督を甲子園に連れていく」

東海大静岡翔洋が放った安打は3本だったが、数字以上の強さを感じさせる一戦だった。「安打で返すのは理想かもしれないが、得点の仕方はそれだけではない。無安打での得点は相手にもダメージを与えられる。先制点で主導権を握り、絶対に得点がほしかった7回にも1点取れた」。原監督の掲げる“負けない野球”を選手が体現した。

初戦を突破し、原監督とナインが一緒に過ごす時間は続く。2打点を挙げた落合は「監督の野球に対する熱い思いで自分の価値観は大きく変わった。常に熱く接してくれる監督に、負けない気持ちでぶつかっている。この大会が最後になるかもしれないと聞いて、チームで甲子園を目指す思いは強くなった」と力を込める。

7回1安打無失点と好投したエースの鈴木豪太投手も「報道には驚いたが、監督が最後になるかもしれないということでチームがより団結した。絶対に原監督を甲子園に連れていく」と誓った。鈴木の武器は140キロを超える直球。だが、原監督からは「スピードを気にするな」と言われてきた。大事なのは球速ではなく投球の組み立て。この試合でも相手打者の反応を見ながら変化球でタイミングを外し、的を絞らせなかった。

2回戦は18日。ノーシードから頂点まで登り詰めるには、6試合が控えている。「心をひとつに生徒の背中を押せるようにしたい」と原監督。大会に参加する静岡109校の中で一番長い夏にする。(間淳 / Jun Aida)

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