王者STANLEYがポール・トゥ・ウインで今季初優勝。WedsSportとの一騎打ちを制す【第4戦GT500決勝】

 第3戦に先んじて変則開催となった2021年のスーパーGT第4戦が、7月18日(日)にツインリンクもてぎを舞台に争われ、GT500クラスは1号車STANLEY NSX-GTの山本尚貴と牧野任祐の現チャンピオンコンビが、FCY(フルコースイエロー)発動にも動じず今季初優勝。栃木出身の山本にとっては12年目の参戦で悲願の地元戦初勝利となった。

 このレースウイークを前に梅雨明けを迎えた栃木県は、金曜搬入日から夕立もない快晴に見舞われ、この日曜日も午前から気温30度を超えてくる灼熱のコンディションに。

 路面温度が50度近くまで上昇した前日予選は、そんな厳しい条件に対してGT500にタイヤを供給する4銘柄が僅差のパフォーマンスを発揮し、ポールポジションを獲得した王者STANLEY NSX-GTを先頭に、フロントロウ2番手にはTOYOTA GAZOO Racing(TGR)でヨコハマタイヤを履くWedsSport ADVAN GR Supraがつけ、3番手には今季からダンロップ装着のRed Bull MOTUL MUGEN NSX-GTと、上位に並ぶ3台が別銘柄という混戦に。

 引き続きサーキット上空から降り注ぐ真夏の日差しにより、13時10分のスタート前時点でついに51度まで上昇した路面温度のなか、序盤数周でグリップ発動条件の異なるであろう各車がどんなペースを発揮するか。また、各ドライバーのスティントを通じてロングディスタンスの“ドロップ”にどんな差異が発生するか。さらに前戦から導入されたFCYや、高温条件下でのブレーキ耐久性など、波乱の要素となりそうな多くのパラメーターが揃った。

 そんな気温33度という条件はパレードラップに向かうマシンを容赦なく襲い、GT300クラスでエンジン始動できず立ち往生する車両が発生。2周のフォーメーションラップを経る直前で車両回収が済み、予定どおり全15台が63周の勝負へとスタートを切った。

 ホールショットを奪った1号車STANLEY牧野以下、クリーンな立ち上がりとなったターン1~2を経て、背後からau TOM’S GR Supra、KeePer TOM’S GR SupraのTOM’S勢がRed Bull MOTUL MUGEN NSX-GTを攻略。ともに36号車auの関口雄飛と、37号車KeePer阪口晴南がそれぞれ3番手、4番手へとポジションを上げていく。

 オープニングラップを経てタイヤの熱入れが完了したか、3周目以降首位のチャンピオンを上回るペースを刻んだ2番手WedsSport ADVANの国本雄資は、7周目にGT300クラスのトラフィックが出現して来た隙を突き、5コーナーのブレーキングから1号車STANLEYとのサイド・バイ・サイドに持ち込むと、そのままアウト側からオーバーテイクに成功。前戦のポール獲得車両がレース早々から首位に浮上する。

 10周時点で路面温度は45度へとわずかに下がったものの、各ドライバーともにタイヤマネジメントへの注力やマシンへの負担を考慮して、こう着状態が続いていく。するとレース距離3分の1を前に1号車STANLEY牧野がペースを落とし、au関口がその背後へ。一方、4番手を争うKeePer阪口は、19周目にRed Bull MOTUL MUGEN NSX-GTの笹原右京にヘアピンで並ばれ、ダウンヒルストレートで先行を許してしまう。

 21周を過ぎてピットウインドウが開くと、9番手にいたARTA NSX-GTが24周で先陣を切ってルーティン作業へ。福住仁嶺から野尻智紀へとロングスティントを託す。続く周回では1号車STANLEY牧野が2番手を死守したままピットへ向かい、ARTAを2秒2上回る40.1秒の静止時間で“エース”山本にバトンを繋いだ。

 26周目にはModulo NSX-GTやAstemo NSX-GTなど、ホンダ陣営が先行してピットロードへ向かい、続いてトップ5を争う37号車KeePer阪口、3号車CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rらがタイヤ交換と給油作業へ入ると、ここで3号車CRAFTSPORTSが先行して37号車KeePerは47.2秒の静止時間を強いられる。

 そして28周を終えて首位WedsSport ADVAN GR Supraがピットへと入るも、ここで作業速度に定評あるTGR TEAM WedsSport BANDOHがわずかにロスを喫して45.0秒で宮田莉朋にチェンジ。これが決定打となり、ピットアウトと同時にホームストレートを通過していった1号車STANLEY山本が首位を奪還した。

 オーバーカットを狙って引っ張った16号車Red Bull MOTUL MUGEN笹原が32周目に最後のピットへ向かうと、大湯都史樹は36号車auでドライバー交代を終えた坪井翔の背後4番手に収まり、全15台のルーティンが完了。すると2番手WedsSport ADVAN宮田がファーストスティント国本の再現のようにタイヤ発動を得て、33周目に1分41秒320とファステストを更新。首位のチャンピオンを追いかけていく。

 ターン1のブレーキングでインを伺い、テール・トゥ・ノーズでプレッシャーを掛ける宮田だが、最終ビクトリーコーナーではGT300を絡め横並びに持ち込むも、老獪な王者のブロックで40周を過ぎても前に出ることは叶わず。するとGT300車両で火災に見舞われたマシンが発生し、42周目に初のFCYが発動する。

 これで一息クーリングを入れた首位の山本は、43周目のリスタートからギャップを拡大するべくスパート。宮田も負けじと追随し、2秒差圏内をキープする。

 その直後、ピット直後から激しい5番手争いを展開していた64号車Modulo大津弘樹と8号車ARTA野尻のバトルに無念の結末が訪れ、背後からの圧に耐えかねた大津が最終ビクトリーコーナーでGT300クラスの車両と接触しストップ。このアクシデントで再びのFCYが出される。

 47周目のリスタートでは、6番手CRAFTSPORTS平手晃平の背後に連なった38号車ZENT CERUMO GR Supraと37号車KeePerがポジションを入れ替え、KeePer平川亮がZENT石浦宏明の前へ出る。

 50周を過ぎて路面温度も41度まで落ち、再び宮田がペースアップを果たすと、53周目突入時点でギャップは1秒を切り0.843秒まで接近。しかしそこから詰めることは許されず、逆に終盤には山本が4秒程度まで差を広げ、ディフェンディングチャンピオンが見事なポール・トゥ・ウインを達成。

 山本は念願の地元戦初優勝を果たし、TEAM KUNIMITSUはスーパーGT通算10勝目を獲得。健闘のWedsSport ADVAN GR Supraは新開発タイヤに手応えを得る2位表彰台、3位にはSW(サクセスウエイト)30kg搭載のau TOM’S GR Supraが入る粘りのレースを披露した。

今季初優勝を果たしたSTANLEY NSX-GT。マシンを降りて喜びを爆発させる

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