【高校野球】球速アップの秘訣は“逆立ち” 168センチ左腕の成長促したドラフト候補右腕の教え

先発した中京大中京・柴田青【写真:間淳】

左腕・柴田青が4回3安打無失点も「良かったところは特にないです」

全国高校野球選手権の愛知大会は18日、各球場で2回戦が行われた。今春の選抜大会でベスト4に入ったシード校の中京大中京は、11-0で豊田南に5回コールドで初戦突破。プロ注目の畔柳享丞(くろやなぎ・きょうすけ)投手(3年)の登板はなかったが、選抜のマウンドにも立った左腕の柴田青(しばた・あお)投手(3年)が4回3安打無失点の好投。春から球速アップした秘密には、畔柳“直伝”のトレーニング法があった。

結果は申し分ない。初戦の先発を任されて4回3安打無失点。三振も4つ奪った。許した安打も、完璧に捉えられた打球は少なかった。ただ、柴田の言葉は反省ばかりだった。

「良かったところは特にないです。初回は球が浮いてしまいました。ストライク先行の投球を心がけたのですが……」

立ち上がり。豊田南の先頭打者を3球で三ゴロに打ち取ったが、2ボールとカウントを悪くした。続く打者にも2球連続でボール。それでも、キレのある直球で見逃し三振に斬った。3番からも三振を奪い、全く危なげなかった。

柴田は今春の選抜で2試合に登板。先発した準決勝の明豊(大分)戦では、3回まで1安打無失点と好投していたが、4回に崩れて一挙5失点で降板した。夏に向けて掲げたテーマは「ピンチでの投球」。この試合でも4回に1死満塁とされたが動じることなく、無失点で切り抜けた。「失点をせずにしのぎましたが、ボール先行で安打を許すピンチを招く過程が悪かったです」と自己評価は低かったものの、成長を見せた。高橋源一郎監督も「球速も制球力も上がっている。春からレベルアップしている」と信頼を寄せる。

身長168センチと小柄な柴田は、投球の軸とする直球のキレとコントロールで勝負する。春から夏にかけ、その直球に磨きをかけてきた。これまで130キロ台前半が多かった球速は、最速139キロまで上がった。

この日はベンチから試合を見守った畔柳享丞(中央)【写真:間淳】

投手陣は「LINE」のグループでトレーニング方法を共有

球速がアップした秘密のひとつが、チームの絶対的エースでプロも注目する畔柳も取り入れているトレーニングだ。中京大中京の投手陣は、無料通話アプリ「LINE」でグループをつくり、トレーニング方法を共有。その中で畔柳がチームメートに伝えたのが「逆立ち」だった。柴田も早速、取り入れた。空き時間に逆立ちを繰り返し「ボディバランスや体幹が鍛えられる」と効果を感じている。

柴田の好投に応えるように打線も大量得点したため、初戦で畔柳の出番はなかった。選抜で右腕の違和感で降板し、春の県大会は登板なし。ただ、状態は問題ないという。この日はブルペンで30球を投げ、3回戦以降の登板に備えた。

6月に実戦復帰3試合目となった選抜優勝校・東海大相模(神奈川)との招待試合で、直球は150キロを計測。さらに、関西(岡山)との練習試合では自己最速を1キロ更新する152キロと順調に仕上げている。さらに、直球を生かす武器も手に入れた。

「直球が主体なのは変わらないが、直球を狙われた時や球数を減らしたい時に変化球が大切になる。省エネ投球をテーマに、1球で仕留められる力がついてきた」

畔柳は力のある直球で押す投球スタイル。奪三振も多いため、自然と球数はかさむ。選抜では疲労が残って最後まで投げ切れなかっただけに、「省エネ」の必要性を感じていた。最後の夏に向けて精度を高めてきたのはカットボールとチェンジアップ。直球を待っている打者に対し、カットボールでバットの芯を外す。チェンジアップはタイミングをずらすのに効果抜群。練習試合で手応えを掴んでいる。

「きょうは柴田の投球を安心して見ていた。甲子園に向けてチーム全員で勝ちに行く。大事な場面では自分が抑えるつもりでいる」と畔柳。チームメートの柴田が好投する姿に頼もしさを感じながら、エースの自覚を口にした。(間淳 / Jun Aida)

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