【高校野球】史上初の4元号甲子園勝利へ 古豪・北海の命運握るプロ注目左腕は「成長を実感」

北海・木村大成【写真:石川加奈子】

北海は今春選抜で神戸国際大付に延長10回サヨナラ負けした

最速148キロのプロ注目左腕、北海の木村大成投手(3年)が、春夏連続甲子園出場へラストスパートをかける。第103回全国高野球選手権大会南北海道大会は17日に札幌市の円山球場で開幕。1分間に2400回転を誇る直球と切れ味鋭いスライダーに磨きをかけ、創部120周年という節目の年に再び聖地のマウンドを目指す。

名門校で1年春から公式戦登板してきた木村が、集大成の夏を迎えている。札幌支部予選では2試合8回を投げて無安打無四球無失点で14三振を奪った。「真っすぐの質も良くなったし、変化球でも空振りがとれた。成長を実感しています」と狙い通りに仕上がった。

道内では無敵の投球を続けている。昨秋は8試合52回2/3を投げて、失点はわずか3(自責2)。防御率0.34は今春の選抜高校野球大会出場校の主力投手でナンバーワンの数字だった。今春の北海道大会1回戦の旭川大高戦で1点を失い、道内公式戦の連続無失点は57回1/3で途切れたが、再び「0」を積み重ねている。

どれだけ北海道内で抑えても、選抜の悔しさは忘れられない。神戸国際大付に延長10回、2-3でサヨナラ負け。「また甲子園に行って、今度は勝ちたい。全道大会は通過点。油断はせず、一戦必勝で戦っていきたいです」と力を込める。

OBの巨人・鍵谷から贈られた弾道計測器で直球は2400回転をマーク

甲子園では力不足を痛感した。「緊張」や「プレッシャー」という言葉とは無縁だった左腕が、ペース配分を誤った。「気持ちが高ぶり過ぎて、序盤にギアを上げ過ぎました」と振り返る。5回までの1安打無失点投球から一転、6回以降は毎回走者を背負う苦しい投球が続いた。

スタミナ不足に加え、昨秋は面白いように三振を奪ったスライダーが思い通りの軌道で曲がらない。序盤の奪三振も「相手が合っていなかっただけで、自分が思ったスライダーは1球もなかった」と納得していなかった。札幌に戻った後、すぐにビデオで原因を分析。「曲げよう、曲げようとするあまり、真っすぐと腕の振りが違っていました」。緩んでいた振りを真っすぐと同じ振りになるように修正し、今夏は自信を持ってスライダーで空振りを奪っている。

5盗塁された甲子園で、クイックの大切さも学んだ。「それまでクイックは大事だと思っていなかったんです。左だし、走られないと思っていました」。クイックの練習をすると、バランスの良いフォームで投げられることが分かった。「その感覚を足を上げた時にもつなげています」とフォームを進化させた。

最新機器も有効活用している。選抜後、創部120周年を記念してOBである巨人の鍵谷陽平投手から弾道計測器「ラプソード」が野球部に贈られた。直球の回転数は、プロの平均と言われる2200回転を大きく上回る2400回転をマークした。別の機器で1年生の時に測った時は1500回転。「良くても2000ぐらいかなと思っていました」と予想を上回る数字を見て自信をつけた。スライダーも2800回転と高い数字を叩き出した。

北海・木村大成【写真:石川加奈子】

エース兼4番は、2016年甲子園準優勝時の主将だった大西健斗以来

平川敦監督は木村の3年間の成長について「コロナ禍で練習できない期間があり、もう少しやりたかったという思いもありますが、現状、よくここまできてくれました」と評価する。

木村は「ラプソード」をコンディショニングにも生かしている。ストレッチを行わずに投げた場合は回転数が低く、股関節や胸郭周りをほぐしてから投げると、回転数が上がることが判明。「筋肉を緩めると力が出ないと思っていましたが、違いました。投げる前のストレッチを入念にやるようになりました」と自身の思い込みを改めた。

今夏は、初めて4番にも座る。北海では2016年夏の甲子園準優勝時の主将だった大西健斗以来のエース兼4番。「下半身から上半身にうまく連動させるという意味では同じ。ピッチングが良くなれば、バッティングも良くなるし、バッティングが良くなれば、ピッチングも良くなる。どっちも同じくらいの意識でやりたいと思っています」と前向きだ。

入学時は北広島市内にある自宅から通学していたが、1年生の10月から野球部寮に入り、体づくりに励んできた。2年春からはDeNAの阪口皓亮投手が使っていた“出世部屋”で生活。机には阪口のサインが記されており、常にプロを意識してきた。

日本ハムが2023年に開業する新球場は、北広島の自宅から徒歩10分の距離。2週間前に帰省した際、建設の進み具合を目の当たりにして心が躍った。「あそこで投げたいという思いがまた強くなりました」。過去に例のない大正、昭和、平成、令和の“4元号甲子園勝利”、その先にプロでの活躍を思い描きながら、高校3年間の最終章を迎える。(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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