【高校野球】世代最速157キロ右腕は「投げるたびに成長」 ドラ1候補受ける主将兼捕手の視線

ノースアジア大明桜・風間球打【写真:荒川祐史】

秋田・明桜の風間球打投手 スコアボードの「157」にスタンド沸く

晴天のこまちスタジアムで「パンッ!」と、乾いた音が鳴り響く。18日に行われた全国高校野球選手権秋田大会準々決勝。この秋のドラフト1位候補にも名が上がる風間球打投手(3年)擁するノースアジア大明桜は、秋田に延長10回の末4-3で勝利した。風間は被安打7、12奪三振で完投。4回には自己最速を4キロも更新し、この世代最速となる157キロを計測した。

「手が痺れました」

この1球を受けた中井稜貴捕手(3年)は苦笑いだ。2-0とリードした4回2死、秋田の4番・佐藤大誠内野手(3年)への4球目だった。1ボール2ストライクから内角高めへの球は、乾いた音を立ててミットに届いた。佐藤は思わず手を出し空振り三振。スコアボードに灯った157キロの表示に、観客がどよめいた。これまでの世代最速は、高知高・森木大智投手、大阪桐蔭・関戸康介投手が計測した154キロとされる。中井は「いや速かったです。表示見た瞬間自分もびっくりしました」と目を丸くした。

最速更新とは裏腹に、試合は苦しい展開が続いた。3回2死満塁から5番・福溜洸太朗内野手(3年)の右前適時打などで2点を先制したが、追い上げを許した。3-2の8回、2死二塁から秋田の4番・佐藤大に左前適時打を許し追いつかれる。「正直焦った」と中井は話すが、大会前に設定したテーマ「笑顔」を忘れず、チームメートに「常に笑顔」と声をかけ続けた。その声に仲間も奮起、続くピンチを風間が同点で凌ぐと、延長10回1死二塁から、2番・土居健太外野手(3年)の中前適時打で勝ち越しに成功した。中井も10回に犠打を決めるなど、主将としてチームを引っ張った。

ノースアジア大明桜・中井稜貴【写真:荒川祐史】

直球も変化球も一級品、すべてを生かし切るリードを目指す

中井は昨秋から、風間の成長を1番近くで見てきた。冬から春にかけて直球だけでなく、変化球のキレとスピードも増した。そして自己最速を更新しながら155球を投げ抜き、10回になっても150キロを計測した姿に「投げるたびに成長している」と感じている。

だからこそ、その能力を十分に発揮させるリードをしたい。初戦は、能代打線の直球狙いを察知すると途中から変化球を多用し、打たせてとる配球に変更した。そしてこの日は、変化球が浮いていると判断し、直球のサインを多めに出した。投手の状態を素早く把握し、打者の読みを察知する視野の広さもある中井には風間も「チームのことを考えてやっている。ピンチでも配球を信じて投げることができた」と、絶大な信頼を置く。

甲子園に、どうしてもたどり着きたい理由がある。スタンドには、OBのロッテ・山口航輝外野手からプレゼントされた黒いTシャツを着用した昨年の3年生が応援に詰めかけた。話す機会はなくても、大きな力になっているのは間違いない。

「先輩の分まで頑張って甲子園に出ないといけないと思うので、背負って頑張ります」。最後の夏、聖地を目指すこともできなかった先輩たちの思いもビンビンに感じてマスクを被る主将が、風間とチームを引っ張っていく。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

© 株式会社Creative2