広島「黒い雨」訴訟うけ 長崎市が上告断念要望 県は国へ働き掛けず

 広島原爆の投下直後に降った「黒い雨」を巡る訴訟で、原告全員への被爆者健康手帳交付を命じた広島高裁判決を受け、長崎の「被爆体験者」らが19日、長崎県と長崎市に対し、上告断念を国などへ働き掛けるよう申し入れた。市は国に対して上告しないよう同日に要望した一方、県は国への上告断念の働き掛けをしない考えを示した。
 申し入れたのは、被爆体験者の被爆者認定を県市に求め、長崎地裁で係争中の第1陣原告団長岩永千代子さん(85)と、第2陣原告団長山内武さん(78)ら。黒い雨訴訟の判決内容が、長崎原爆投下時に国の定める被爆地域外にいた体験者の救済にもつながると期待している。
 長崎市の前田孝志原爆被爆対策部長は申し入れに対し「国に広島高裁判決を受け入れて上告をしないことと、長崎の被爆地域拡大の2点を要望したい」と回答。同日、厚生労働大臣宛てに田上富久市長名の要望書を提出した。
 一方、県の山崎敏朗原爆被爆者援護課長は「(黒い雨訴訟の原告と被告が)当事者間で話し合うべき問題」と述べ、県として国に上告断念の要望はせず、「申し入れがあったことを国に伝える」と述べるにとどめた。

© 株式会社長崎新聞社