会社員が副業で使える控除や申請してもらえるお金は?

多様な働き方ができるようになり、副業をしている会社員の方も多いのではないでしょうか。小規模に始めた副業であっても、徐々に軌道にのって納税が必要な規模になってくると、ますますやりがいを感じてくるでしょう。副業のクオリティをさらに磨いていくことはもちろんですが、副業を継続していくためには経済的な対策も大切です。

今回は、節税のために控除の利用や、申請してもらえるお金の補助金・助成金についてお伝えします。幅広く情報を集めて、今後の副業に役立てていきましょう。


副業するなら、経費も忘れずに計算

本業・副業にかかわらず、収入があれば申告のうえ納税をすることが基本です。ただし、会社員のように本業での収入が給与所得で、年末調整をしている場合、副業の所得が20万円以下であれば確定申告は不要です。

この際、所得と収入の違いに注意が必要です。

たとえば、フリマアプリで自分で作った衣服や雑貨などを売ったり、自家用車をシェリングエコノミーで貸したりして得た収入は副業の収入ですが、ここから経費を差し引いた残りが、所得になります。

つまり、収入が20万円以上あっても、経費を差し引いたら20万円以下であれば、所得は20万円以下、確定申告が不要になります。

経費に計上できるものには、副業の種類によって違いがあります。業務上必要な経費を確認し、所得を適切に計算しましょう。経費には、以下のようなものがあります。

※国税庁HPを参考に筆者が作成

携帯電話の通信費など、仕事だけではなくプライベートでも使用しているものについては、全額経費にはできません。使用時間などで、仕事で2割、プライベートで8割というように按分して、仕事で使った分を必要経費に計上します。

20万円のルールは、副業の収入がそれほど高額でなければ税額も少ないので、副業のためだけに確定申告の手間をかけなくてもよい、とされているからです。ですから、たとえば医療費控除や住宅ローン控除などのために確定申告する時は、副業の所得が20万円以下でも申告する必要がありますので気を付けましょう。

事業規模が大きくなったら、青色申告特別控除を利用

副業とはいえ事業規模が大きくなったら、個人事業主として税務署に開業届を提出し、青色申告ができるようにしておくといいでしょう。

青色申告とは、複式簿記などの一定の水準で記帳する確定申告制度のこと。確定申告には白色申告もありますが、青色申告を行うと「青色申告特別控除」という税制上の優遇が受けられます。

青色申告特別控除は、10万~65万円です。

不動産所得または事業所得で、e-Taxで申告すると、65万円の控除が受けられます。控除が大きければ、課税所得が少なくなり、節税ができるので、しっかり活用したいですね。
青色申告のための記帳は一般的に複式簿記ですが、専門的な知識がなくても各社からクラウド会計などがでていますので、初心者でも大丈夫です。

青色申告のための準備を

ただし、青色申告をするには、管轄の税務署に提出期限までに、所得税の青色申告承認申請書を提出し受理されなくてはなりません。青色申告を行う年の3月15日までに、もしくは新規開業した場合はその日から2カ月以内に提出しましょう。

確定申告の時期になってから青色申告をしようと思っても、すぐにはできないのであらかじめ準備しておくことが大切です。

事業が大きくなってくると、家族の助けが必要になってくるかもしれません。家族とはいえ、仕事であれば給与を支払いたいですよね。生計を同一とする家族への給与は原則として必要経費になりませんが、青色申告では一定の要件を満たせば「青色事業専従者給与」として、経費とすることが可能です。

経費として認められる給与の金額に上限額の定めはありません。妥当な金額であれば必要経費になりますので、配偶者に仕事を手伝ってもらった場合などに活用できます。ただし、こちらについても事前の税務署への申請が必要です。また、配偶者控除(扶養控除)の対象ではなくなることにも、注意しておきましょう。

事業をひろげるには、補助金・助成金の利用も検討

さらに事業をひろげるには資金が必要です。そのためには、利益を貯蓄したり、銀行に借入れを申し込んだりするだけではなく、補助金の利用も考えてみるといいでしょう。
補助金は、国や自治体が条件に合った事業に対して支給するお金です。貸付とは異なり、基本的に返済義務はありません。

●小規模事業者持続化補助金

販路開拓を目指す小規模事業者が対象です。
<一般型>
補助額:上限50万円
補助率:3分の2
補助対象:店舗改装、チラシ作成、広告掲載など

<低感染リスク型ビジネス枠>
ポストコロナ社会に対応したビジネスモデルの転換のための取組や感染防止対策の一部を支援するものです。
補助額:上限100万円
補助率:4分の3
補助対象:消毒液購入費、換気設備導入費、テイクアウト・デリバリーサービス導入、ECサイト構築など

ウェブサイトを作るのには費用がかかりますが、このような補助金を利用できると助かりますね。
通年での公募なので、都合の良いタイミングで、申請・事業実施ができます。書類に不備があると補助金は受けられません。十分に準備をして申請するといいでしょう。

●IT導入補助金

IT導入、DX(デジタルトランスフォーメーション)を検討中の方向けです。
<通常枠>
補助額:30万~450万円
補助率:2分の1
補助対象:ソフトウェア、クラウド利用費、専門家経費等

<低感染リスク型ビジネス枠>
補助額:30万~450万円
補助率:3分の2
補助対象:ソフトウェア、クラウド利用費、専門家経費、PC・タブレット等のレンタル費用等

コロナ禍をきっかけに、感染リスクを下げるため顧客対応や決済業務を非対面にするニーズが大きくなっています。遠隔注文システムや、キャッシュレス決済システム、会計管理システムを導入するような費用にも利用できます。

●創業に関する補助金(助成金)

さまざまな自治体で、創業または創業間もない事業者に向けて補助金や助成金の制度があります。地元ではどのような制度があるのか、確認しておくといいですね。
東京都では、創業予定者または創業5年未満の個人事業主も助成の対象者です。

<創業助成事業(東京都)>
助成額:上限300万円
助成率:3分の2以内
助成対象:創業時に必要な経費(賃借料、広告費、器具備品購入費、産業財産権出願・導入費、専門家指導費、従業員人件費)

これらのほかにも、さまざまな補助金・助成金があります。申請をするには条件をクリアし、書類を揃える必要があります。確かに手間はかかりますが、それだけの価値があることではないでしょうか。

資金が必要になったら、借入れだけではなく、利用できる補助金や助成金がないか情報を集めるといいでしょう。


副業といっても、その規模によって活用できるものはさまざまです。現状維持でコツコツ続けていくのもいいですし、思い切り事業拡大を目指すのもいいでしょう。将来の希望に向けて、自分らしい働き方を実現していってくださいね。

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