未来ある野球少年少女を守るため ポニー全国大会で肩肘検診室「中学野球は通過点」

ポニー全日本選手権で肩肘検診室が開設された【写真:小林靖】

エコー検査機で肘の状態をチェック、小学生時の故障歴も判明

22日から開催されているポニーリーグの全日本選手権。大会本部がある東京・江戸川区球場の医務室には、大会期間を通じて肩肘検診相談室が開設されている。大会3日目の24日には、ポニー大会で準々決勝を戦った埼北ウィンズの全登録メンバー16人が受診し、現在の肘の状態について理解を深めた。

肩肘検診相談室を担当するのは、トミー・ジョン手術の権威でもある古島弘三医師をはじめとする館林慶友整形外科病院のスタッフたち。埼北ウィンズの検診は古島医師が担当し、エコー検査機を使って各選手の肘の内側と外側から状態をチェックした。

「小学生の頃に肘が痛かった経験があるでしょう?」

映し出された肘内側の画像を見た古島医師が、そう質問したのは9人。その全員が「はい、あります」との返事だったが、幸い現時点で痛みを感じる選手はゼロで、大きな怪我につながるような故障は発見されなかった。

健康な肘であれば滑らかに映るはずの骨のラインだが、故障歴のある選手のラインはデコボコに映る。

「ここは剥離骨折した箇所が自然に治った痕ですね」

「これは剥離した骨と肘の骨との距離が遠くて完全にくっついてはいない状態にあります」

「故障した痕があるから、練習でも投げすぎないように球数限度の範囲内で」

「肘の内側に張りを感じたら無理をしないで。張りは痛みの前兆だから」

「外野手だったら、練習ではあまり遠投をし過ぎないようにしよう」

将来を見据え「ここで大怪我をして次に進めなかったらもったいない」

選手に語りかける古島医師の言葉に真剣に耳を傾けるのは、チームを率いる三浦文雄監督だ。指導歴25年を誇るベテラン監督は選手全員のエコー画像を確認。「子どもたちに怪我だけはさせたくない。今、肘がどういう状況にあるのかが分かれば、それぞれの選手を指導する時の参考になります」と大きく頷く。

古島医師のポニーリーグ理事就任をきっかけに、子どもたちの故障に対する意識が高まったという三浦監督。チームが拠点を置く埼玉・行田市から慶友整形外科病院まで車で40~50分ということもあり、選手から「痛い」「張りがある」の声が聞こえると、すぐに慶友整形外科病院での診察を勧めるという。

「痛いと言ったら無理はさせません。休んで治る怪我であれば休めばいい。中学野球は通過点ですから。ここで大怪我をして次に進めなかったらもったいないですよ」

中学1年生で入団するや否や、肩肘の痛みを訴える選手も少なくない。「本当は小学6年生で夏の大会が終わった後に肩肘検診を受けて、中学入学までに治してくれるのがいいんですけど」と話すが、来年からは入団したらすぐに肩肘検診を受け、故障歴も含めて選手の健康状態を確かめた上で指導にあたる予定もあるそうだ。

「チーム全員の状態が確認できる、またとない機会」と今回の肩肘検診相談室を利用した三浦監督だが、古島医師は「故障に対する意識を継続して持ってもらうことが大切。こういう機会を積極的に利用してほしいですね」と話す。

ポニーリーグの頂点を決める全日本選手権の舞台裏では、大人による子どもたちの健康を守る努力が積み重ねられている。(Full-Count編集部)

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