ミスを犯した選手を細かな配慮で再生 DeNA三浦監督の“ハマの番長流”操縦術

DeNA・三浦大輔監督【写真:荒川祐史】

桑原はシーズン序盤に大きなミスを犯すも、三浦監督は辛抱強く起用

就任1年目の三浦大輔監督率いるDeNAは4月に2分けを挟み10連敗を喫するなど、開幕直後から低迷を続けた。しかし、交流戦では一転して球団史上最高タイの3位と健闘、一時は広島を抜いてリーグ5位に浮上した。結局再び最下位に落ちて31勝44敗11分けで中断期間を迎えたが、5位広島を0.5ゲーム差、4位中日を1.5ゲーム差の射程圏内にとらえている。まだまだ巻き返しは可能だ。

なかなか結果が出ない選手、ボーンヘッドを演じた選手に対し、どこまで温情をかけ、どこから厳しく決断を下すべきか。指揮官としては悩むところだ。初めて1軍の指揮を執っている三浦監督にとってはなおさらだろう。前半戦で印象的だったのは桑原将志外野手の起用法だ。

桑原はガッツマンで、超人的なプレーでチームの危機を救うこともある。だが、シーズン序盤は大きなミスも犯した。4月18日の巨人戦、0-1で迎えた6回に岡本和が放った中前の飛球に対し、桑原は果敢にダイビングキャッチを試みたものの後逸。一気に三塁を陥れられ、巨人の2点目につながった。最終的に2-2の引き分けに終わった試合後、三浦監督は「打球判断については後でコーチと話をしてもらう」とした上で、「ああいう気持ちは大事にしたい。積極的な気持ちは消したくない」と強調した。

5月12日の巨人戦では、5-5で迎えた9回2死走者なしで一塁後方へ平凡なフライを打ち上げた瞬間、桑原はがっくり頭を垂れ全力疾走を怠った。その結果、相手野手が落球し、本来なら二塁には到達できていたはずが一塁ストップ。試合も引き分けに終わり、三浦監督は「全員でああいうことをしっかりできるようにしていかないといけない」と苦言を呈した。

飛球を落球した桑原を翌日は代走で起用、走塁を褒め上げた

さらに5月26日のオリックス戦では、2回の守備で2死満塁からモヤが放った平凡な中飛を桑原が落球して3点タイムリーエラーに。三浦監督は「らしくないプレー」と見て、4回の守備から“懲罰交代”に踏み切った。とはいえ、即ベンチに下げたのではなく、3回の打席で1度桑原に挽回のチャンスを与え、中飛に倒れたのを見てから代えたところは“ハマの番長流”だった。

翌27日、桑原はスタメンから外れたが、三浦監督は試合前に「途中から行くぞ」と声をかけるなど配慮していた。実際、8回の攻撃で先頭のオースティンが二塁打で出塁すると、桑原を代走で起用。続く宮崎の遊ゴロで三進し、さらにソトの右犠飛でホームを踏むと、「桑原が好判断で三塁に行ってくれたからこそ、追加点を取れた」と褒め上げたのだった。

桑原が猛烈に奮起したのはここからだ。「1番・中堅」スタメンの座を奪い返すと、2割7分を切っていた打率が急上昇し、現在はリーグ3位の.318。好調な打線を牽引し、守備でも好プレーを連発した。後半戦のキーマンの1人だ。

選手は単なる駒ではない。指揮官の言葉1つ、起用法1つで働きが大きく変わる。厚い人情味が見え隠れする三浦監督の采配に後半戦も注目したい(Full-Count編集部)

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