【東京五輪】猛暑地獄の裏に潜む「カネと利権」 休憩、水・氷では解決できず

灼熱のテニスコート。選手は異常な暑さを訴えている

東京五輪が〝二重苦〟にあえいでいる。新型コロナウイルス禍に加え、招致時から不安視されていた「猛暑地獄」がアスリートを直撃。特に、テニス選手からは「信じられないほど暑い」との悲鳴が上がっている。国際競技連盟(IF)や大会組織委員会は様々な対策を講じているが、もはや打つ手はない。一方で、多くの関係者は猛暑問題を引き起こす根源的な原因を指摘。たどり着くのは、やはり〝カネ〟の問題だ。

「コートで卵焼きができそうだ」。テニス会場の「有明テニスの森」で、カメラマンが滝のような汗をかきながら嘆いた。連日30度を超える猛暑の中、センターコートは灼熱地獄と化している。男子世界ランキング2位のダニル・メドベージェフ(ROC)は試合時間を夜間へシフトすることを提案し、同1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)も賛同。異常な暑さを訴える声は多い。

今大会のテニス競技では「ヒートルール」という暑熱対策が施され、気温や湿度などの気象情報を基に休憩時間が設定されている。同競技のテクニカルデレゲート(TD)を務める川廷尚弘氏は「一定の気温を超えると第3セット前に10分間の休憩を取る。今回は五輪史上初めて男子にも採用しています」と説明する。

実際、競技の初日と2日目に実施されているが、休憩を取ったとしてもコートから照り返される熱量に変化はなく、根本的な解決にはつながらない。トライアスロンやマラソン・競歩など他の屋外競技も同様で、大会組織委員会の小谷実可子スポーツディレクターは「十分な氷と水の用意をしている。競技役員の間ではクールベストが好評。アスリートがクールダウンできるラウンジも作っている」と口にするが、どれも〝付け焼き刃〟なものばかりだ。

そんな中、某五輪競技団体の関係者は「結局は放映権ですよ。そもそも秋にやれば猛暑問題など無関係。でも、それだけはできない」と内情を明かす。五輪が商業主義に走った80年代以降、米国内で複数のプロスポーツが開催される秋は敬遠されてきた。昨年3月にコロナ禍で1年延期する際には秋開催プランも浮上したが、多額の放映権料を拠出する米放送局NBCが猛反発したと言われる。国際オリンピック委員会(IOC)にとって重要なのは、一にも二にもスポンサーということだ。

コロナ禍に加えて選手たちを苦しめる猛暑問題。その裏に潜む「カネと利権」は、ある意味でコロナよりタチが悪そうだ。

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