妖怪ケンムン伝承の地「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」が世界自然遺産に登録

ケンムンの足跡が見つかったことを報じた本紙紙面(2010年3月)

オンラインで開催中の国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会は26日、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」(鹿児島、沖縄)の世界自然遺産登録を決めた。亜熱帯の森にアマミノクロウサギやヤンバルクイナなど貴重な固有種が数多く根付く生物多様性を評価した。これで政府が候補とした全件が登録され、国内最後の自然遺産となる可能性が高い。

登録区域は鹿児島県の奄美大島と徳之島、沖縄県の沖縄本島と西表島の4島に及ぶ計約4万3000ヘクタールで、大部分が森林。大陸から切り離され現在の島々が形成される過程で動植物は独自の進化を遂げ、イリオモテヤマネコなど絶滅が危惧される固有種が多く生息する。

日本の自然遺産登録は1993年の「白神山地」(青森、秋田)と「屋久島」(鹿児島)、2005年の「知床」(北海道)、「小笠原諸島」(東京)以来5件目。これらに共通するのは妖怪、妖精、神様、モノノケの伝承だ。今回も鹿児島側には妖怪ケンムン、沖縄側にはキジムナー。現代の地元住民の多くがその実在を確信している。徳之島の住民は「祖母の話によると、さとうきび畑に行列で歩いていく姿を見たそうです。ケンムンと目が合うと、意識が遠くなって気絶するから、目を合わせちゃいけない。ハブも怖いけど、ケンムンも同じように怖い。何をされるか分からんからね」と、恐れているというのだ。神秘的な場所なのだ。

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