【東京五輪】〝キング内村〟卒業できた体操男子 「世界を取れる4人」栄光の架け橋はパリへ! 

日本最強の4人(中央右から橋本、萱、谷川、北園)

“ほぼ金メダル”だ! 東京五輪の体操男子団体決勝(26日、有明体操競技場)で予選1位通過の日本はロシアオリンピック委員会(ROC)にわずか0・103点差の銀メダル。惜しくも敗れはしたものの、最後は驚異的な追い上げで見せ場をつくり、新生ニッポンの実力を証明した。原動力となったのは「脱・キング」への強い共通意識と、それを成し遂げるための妥協なき準備だった。

限りなく「金」に近い「銀」だった。リーダー萱和磨(24=セントラルスポーツ)を筆頭に、谷川航(25=同)、橋本大輝(19=順大)、北園丈琉(18=徳洲会)とすべてが五輪初出場。体操界を長年リードしてきた個人総合2連覇の内村航平(32=ジョイカル)ら2016年リオ五輪金メンバーは一人もいない。それでも全員が「今、日本で一番強い4人」と信じて戦っていた。

ROCに1・271点差の3位で迎えた最終種目の鉄棒。最後を託された新エース橋本は完璧な演技を披露した。着地をピタッと止め「勝ったと思った」(谷川)とROCを追い詰めたが、わずかに及ばなかった。

試合後、萱は「内容は金、結果は銀」と誇り、橋本は「世界を取れる4人」、谷川も「これが今の最強メンバー」と言い切った。この共通意識こそが4人の原動力だった。

19年秋の世界選手権、キング内村が代表から外れたころ、橋本は本紙にこんな本音を漏らした。「団体で戦うのは俺たちなのに、なんで内村さんの質問ばかりなのか。俺らが代表なのだから、今は俺らが日本で一番強い。遠まわしに“内村さんが落ちたからお前が入れたんだろ”って聞こえて、すごくイラついて…」

あれから約2年が経過し、内村は「彼らが主役。もう心配はいらない」と言った。ここに世代交代は完結したのだ。

結束を深めるための準備も抜かりなかった。直前合宿に立ち会った日本体操協会の高橋孝徳男子審判本部長は「彼らは選手村を出てから会場に到着し、練習を始める時間を想定。分単位までシミュレーションしていました」と証言。午後3時59分に味の素ナショナルトレーニングセンター(東京・北区)の体育館のドアの前でみんなで待ち構え、4時ピッタリに入る徹底ぶり。
高橋氏は「勝敗を超え、どうやって日本の体操のすごさを見せるか?というレベルまで達していた。新しいチームの強さが確実にあった」と舌を巻いた。

4人の夢には続きがある。敗戦直後、萱は「すでに(24年五輪の)パリを見ている自分がいる」。他のメンバーからも自然と「パリ」のワードが出た。橋本も「五輪が毎回同じメンバーじゃ面白くない。3年後もシ烈なレースが待っているが、ワクワクしかない。世代交代は許さない」と、すでに先を見据えている。キングのもとを“卒業”した4人の視線は、早くも次なる「栄光の架け橋」に向かっている。

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