「黒い雨」訴訟 首相が上告断念 被爆体験者ら「高く評価」 長崎も救済を

 広島の「黒い雨」訴訟で菅義偉首相が上告断念の方針を示した26日、国が定める地域外で長崎原爆に遭ったため被爆者と認められていない「被爆体験者」らは政治決着を喜び、被爆者認定を求める長崎訴訟の原告救済実現に期待する声が相次いだ。
 「高く評価したい」。長崎地裁で係争中の被爆体験者訴訟の第1陣原告団長、岩永千代子さん(85)は、こう歓迎する。黒い雨訴訟は「被爆地域の拡大を求める点で長崎と同じ。広島高裁は内部被ばくによる健康被害の可能性を認めた。長崎の裁判にも、いい影響を与える可能性は十分にあるのでは」と期待した。
 第2陣原告団長の山内武さん(78)は「全員勝訴になって、本当に良かった」と安堵(あんど)する一方、上告断念は「当然のこと」と冷静に受け止める。長崎の訴訟についても「励みになる。(この結果が)長崎にもつながってほしい」と語った。
 被爆体験者訴訟を支援する会の代表で、被爆者の川野浩一さん(81)は「上告すれば国民の反発を受けると計算した上での判断だ」とみる。その上で「広島だけでなく、長崎の被爆地域拡大も並行して国に求めていくべきだ」と強調する。
 菅首相らに広島高裁判決を受け入れるよう求める声明を24日に出した全国被爆二世団体連絡協議会の崎山昇会長(62)は「非常によかった。被爆2世の法的援護にもつながることを期待したい」と話した。
 長崎市の田上富久市長は「喜ばしく思う。長崎の被爆体験者も救済するため、爆心地から半径12キロの範囲の被爆地域の拡大を引き続き国に強く求めていく」とのコメントを発表した。

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