【柔道】悲願の金!永瀬貴規はC・ロナウド&メッシ級〝驚愕テク〟の持ち主

奇跡の復活で金メダルを獲得した永瀬貴規

メッシ&C・ロナウド級だ。東京五輪の柔道競技4日目(27日、東京・日本武道館)、男子81キロ級で永瀬貴規(27=旭化成)が悲願の金メダルを獲得した。2016年リオ五輪で銅メダルに終わってから、5年の月日が経過。17年世界選手権で右ヒザに大ケガを負い、一時は現役引退の危機に追い込まれたものの、大一番で〝奇跡の復活〟を果たした。逆境を乗り越えた男の強さはどこにあるのか。その秘密に迫った。

粘り強さは健在だった。初戦をゴールデンスコアの末、反則勝ちを収めると、2回戦は残り9秒で払い腰を決めて一本勝ち。準々決勝、準決勝も順調に勝ち進んだ。決勝では強敵モラエイ(モンゴル)の怪力に苦戦し延長戦までもつれたが、最後は体落としで技ありを奪い、金メダルをつかみ取った。

「前回のリオ五輪で悔しい思いをして、それから5年間、本当につらい時間のほうが多かったんですけれど、本当にこのためにやってきて良かった」と喜びを口にした。

リオ五輪で銅メダル獲得後の17年世界選手権で、右ヒザの前十字靱帯を断裂する重傷を負った。当時は柔道関係者の誰もが「今後の競技人生に関わるのでは…」と心配したほどの大ケガ。それでも手術→リハビリを経て1年後に復帰した。復調に手間取ったものの、座右の銘「日々精進」の通り、地道な努力を続けて粘り強く稽古に励み、大舞台にたどり着いた。

強さの秘密は、たぐいまれなるセンスにある。男子73キロ級で五輪2連覇を達成した大野将平(旭化成)が「代表選手の中で永瀬が一番強い」と話すほどで、全日本男子代表のアナリストを務める鈴木利一氏はこう指摘する。

「永瀬的には裏を返せば技が切れないとかそういう感覚にいると思うが、僕らからしたら相手の動きに合わせてそれを予測して、なおかつ相手の動きをコントロールして技に入っている。あの永瀬流の体の長さ、しなやかさ、粘り強さ、これはマネできないですよ、センスの塊ですね」

長い手足を持つ永瀬にしかできない体の使い方。相手によって最適な技を取捨選択し、繰り出すことができるのが最大の魅力だ。「努力と練習量もすごいので、重量級、軽量級問わず、誰とでもできます。2階級以上でもね。例えばケガのリスクがあるが、100キロ超級の選手ともやり合えるし、この強さっていうのは、やっぱり僕はものすごくリスペクトしている」(鈴木氏)

さらに稽古相手として接した際には、永瀬の〝スゴさ〟を実感したという。「実際に練習で受けてみて、やばいと思った。受け身が取れないので、やばかった。本当にテクニックと身体的なものが全て備わっている。特に体重のかけ方。例えるならFWリオネル・メッシやFWクリスチアーノ・ロナウドのFKがあるじゃないですか。あの精度ですよ」。サッカーの世界的なスーパースターが放つキックと同じレベルの〝技術〟があるというから驚く。

まさにハイスペックな柔道を展開する永瀬は、世界の猛者相手にも自らの柔道を貫いた。「僕の長所は気持ちで折れずに最後まで攻め抜く姿勢だと思うので、それが今大会、生かせてよかった」。日本男子は4日連続の金メダル。ニッポン柔道の底力が際立っている。

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