ERC第3戦は地元イタリア勢対決を制した元2冠王者、ジャンドメニコ・バッソが勝利

 7月23~25日に開催された2021年のERCヨーロッパ・ラリー選手権第3戦ラリー・デ・ローマ・キャピタルは、今季初のターマック・ラリーで新旧の地元スペシャリストたちが躍動。レグ1で首位を奪ったアンドレア・クルニョーラ(ヒュンダイi20 R5/ヒュンダイ・ラリー・チーム・イタリア)に対し、2度のERCチャンピオンを経験する大ベテラン、ジャンドメニコ・バッソ(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)が5.4秒差を覆し、貫禄の逆転勝利を飾っている。

 今回で5回目の開催を数え、近年のシリーズでも人気イベントのひとつに成長したラリー・デ・ローマ・キャピタルは、恒例のコロッセオ(闘技場)を臨む市街中心地で、金曜夜から“SSS0”と名付けられた新たなスーパーSSを設定。続いて土曜早朝から6SS、日曜レグ2の7SS、合計190.09kmの競技区間で争われた。

 そのスーパースペシャル“ナイト”ステージから速さを見せたのは、イタリアの新鋭クルニョーラで、現在32歳と遅咲きの才能は、2020年に宿敵バッソを降して自身初のイタリア国内選手権チャンピオンを獲得。ERCジュニア卒業生でもある男は、2019年の同ラリー覇者でもあるバッソと、レグ1から最速タイムを分け合うスピードを披露していく。

 そして初日最終SS6での「馬鹿げたミス」さえなければ、2番手のバッソに対して5.4秒よりもさらに「快適なマージンが築けたはずだった」と悔しがった。

「僕らは昨夜ローマで最初のステージを勝ち獲った時点から非常にうまくスタートを切り、今日もその勢いを持続することができた」と、オーバーナイト・サービス帰還後に振り返ったクルニョーラ。

「明日もこのペースを継続する必要があるけれど、ほかの多くのドライバーもプッシュしているから、それほど簡単ではないだろう。厳しい勝負になるだろうし、今日の最終ステージのような愚かなミスをしたら、多くのものを失うだろうね」

 一方、SS6で前戦勝者のニコライ・グリアシン(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)とベストタイムを分け合い、初日4ステージで最速を刻んだ2番手バッソに続き、3番手には直前のWRC世界ラリー選手権第7戦ラリー・エストニアのWRC3クラスで勝利を飾った、現ERCチャンピオンのアレクセイ・ルカヤナク(シトロエンC3ラリー2)が名を連ね、レグ1終了後には「僕らははもっと速く走れるはずだったが、セットアップに何かが欠けている」と、サンテロック・ジュニアチームとともにシトロエンの再調整を示唆した。

 その他、ERCレギュラー登録の有力ドライバー勢では、チームMRFタイヤのエースとして開発を担うクレイグ・ブリーン(ヒュンダイi20 R5)が12番手。WRC優勝経験者のアンドレアス・ミケルセン(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo/トクスポーツWRT)は「トリッキーで、まったくリズムが掴めない」と、同ラリー初参戦で16番手と厳しい初日となった。

レグ1で首位を奪ったアンドレア・クルニョーラ(ヒュンダイi20 R5/Hyundai Rally Team Italia)
WRC優勝経験者のアンドレアス・ミケルセン(シュコダ・ファビアRally2 Evo/Toksport WRT)は「トリッキーで、まったくリズムが掴めない」と苦戦
初日は3番手につけたディフェンディングチャンピオンのアレクセイ・ルカヤナク(シトロエンC3 Rally2)だったが……

■「とにかく慎重に慎重を期した」と勝者バッソ

 明けた日曜は、最初のステージであるSS7からイタリア国内3冠を誇る“帝王”バッソがスパートし、首位とのマージンを3.4秒にまで詰めていく。一方のクルニョーラは、ヒュンダイi20 R5のリヤアクスルに問題を抱えた上、SS8のフィニッシュ手前5km地点で左フロントタイヤのパンクに見舞われ万事休す。

 このステージで28.7秒のギャップを稼ぎ首位浮上に成功したバッソは、残るステージをタイムマネジメントに徹する老獪な走りで走破し、SS13終了時点で35.8秒差を持って今季ERC初優勝を手にした。

「すべてがうまくいったね。とてもトリッキーなラリーだったけど、今は最高にハッピーだ」と喜びを語った勝者バッソ。「午後のループは長く、引き続き集中する必要があった。たとえクルニョーラやルカヤナクに問題が発生していたとしても、それがいつ自分の身に降りかかるかは分からないからね。とにかく慎重に慎重を期したよ」

 話題に上がったそのルカヤナクは、午前最後のループステージでワイドになり、コースサイドのグラベルに乗ると、大きくスライドしたシトロエンはリヤから立木に激突。クルーに怪我はなかったものの、久々に“ロシアンロケット”らしい結末でラリーを終えた。

 代わって3位表彰台争いを繰り広げたのは2019年のERC3ジュニア王者でもあるエフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo/ラリー・チーム・スペイン)と、ハンガリー出身ノルベルト・ヘルツェグ(シュコダ・ファビア・ラリー2 Evo)のふたり。

 最終SS前まで5.3秒差でポディウム圏内を死守していたヤレーナだったが、ファビア・ラリー2 Evoとの初ターマック参戦で「最後はタイヤがなくなった。これが今の僕にできる精一杯だった」と、わずか0.3秒差での逆転を許す悔しい結果に。

 一方、着実に総合順位を上げてきていたミケルセンは、トラブルから2輪駆動と化したファビアに手を焼き最終ステージでスピン。「ここまでのテストは非常に限られていたし、ターマックで必要な攻撃性とスピードをコーナーで発揮するコンデイションではなかった」と総合8位止まり。同じくMRFタイヤ装着のブリーンも総合9位でラリーを終えている。

 今戦がWRC第3戦クロアチアで負った怪我からの復帰戦となった新井大輝(フォード・フィエスタ・ラリー2)は、レグ2でエンジンの不調に見舞われSS7でストップ。SS9でリタイアを喫した。新井はその原因が熱害によるECUの破損であることを自身のTwitterで明らかにしている。

 ERCの次戦第4戦はふたたびのターマック・ラリーが続き、チェコの首都プラハから南に300km離れたモラヴィアの大学都市を拠点とし、ラフな舗装路を特徴とする『バルム・チェコ・ラリー・ズリン』が8月27~29日に争われる。

2019年のERC3 Junior王者でもあるエフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビアRally2 Evo/Rally Team Spain)は惜敗の4位
「すべてがうまくいったね。とてもトリッキーなラリーだったけど、今は最高にハッピーだ」と喜びを語った勝者バッソ
ERC2クラスでは、Rally2 Kit採用のスズキ・スイフトR4lly Sのハビエル・パルドが連勝を飾っている

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