【高校野球】静岡のプロ注目右腕は37回無失点で聖地へ 1イニングを1分半で終える驚異の“高速投球”

胴上げされる静岡・高須大雅【写真:間淳】

静岡の右腕・高須は東海大静岡翔洋を2安打に封じて完封勝利

2年ぶりの甲子園をかけた一戦もきれいにゼロを並べた。全国高校野球選手権静岡大会決勝が28日に行われ、静岡が4-0で東海大静岡翔洋を破り、2大会連続26度目の優勝を飾った。静岡のプロ注目右腕・高須大雅(たかす・ひろまさ)投手(3年)が東海大静岡翔洋打線を2安打に封じて完封勝利。静岡大会は計37イニング無失点と1点も失わず、聖地への切符を手にした。

捕手がサインを出すのとほぼ同時に投球モーションに入る。ノーワインドアップから左足を上げながら、サインに頷く時もある。静岡のエース・高須は川端慶捕手(3年)から返球を受けると、すぐに次の投球へ向かう。

初回、死球で走者を出したが、東海大静岡翔洋の4番を二ゴロに打ち取った。決勝の立ち上がりに費やしたのは3分半ほど。高須は2回も、3分をかけずに3つのアウトを奪った。

「1分30秒」「1分26秒」「1分29秒」。驚異的な数字を叩き出したのは、2点目の援護をもらった直後の3回から5回までだった。3イニング連続、1分半以内で相手の攻撃を終わらせた。

「打者に考える時間を与えたくない。テンポ良く投げた方が野手も守りやすいと思うし、攻撃にもつながる」。5回裏、高須がつくり出すリズムに乗って、打線は2点を追加。勝利を大きく手繰り寄せた。決勝の試合時間は1時間59分。そのうち、高須が投球に費やした時間はわずか32分ほどだった。

春季県大会敗退後にフォームも修正「バテないようになった」

今夏、1点も許さなかった高須には苦い記憶がある。掛川西と対戦した春の静岡県大会2回戦。3点リードの6回に4点を失い逆転負けした。連続四球に暴投。さらに味方のエラーが絡み、「自分のせいで負けた」と責任を背負った。中盤になると球が浮いて制球が定まらず、考え込んで投球のリズムを崩す悪循環。課題が浮き彫りとなった。

高須は捕手の川端とコミュニケーションを増やして考え方を共有し、サインに首を振らない信頼関係を築いた。今大会は、3か月前の春季大会とは見違えるようにテンポが良くなった。決勝までの6試合でバッテリーエラーは1つもなかった。

もう1つの課題だったスタミナ不足は「バテない投げ方」で解消した。投球フォームを一から見直して、無駄な力を省いたフォームを追求。シャドーピッチングやブルペンで理想のフォームを固めた。特に意識したのは下半身主導での投球。軸足となる右足のかかとに体重を十分に乗せてから左足へ体重移動させることで、力を入れなくてもボールの威力が増した。

「力みがない投げ方ができるようになって、6回、7回でバテないようになった。ストライクゾーンで直球勝負できる自信もついて球数も減り、体力的にもゆとりが生まれた」。決勝戦の最終回に自己最速まで1キロに迫る145キロを計測。暑さと疲労も難敵となる夏の大会で、最後まで余裕を感じさせた。

身長192センチ、最速146キロ。潜在能力の高さはプロからも高く評価されている。「甲子園で勝つことが目標なので、ここからです」と高須。無失点で静岡県の頂点に立った右腕は、聖地のスコアボードにもゼロを並べる。(間淳 / Jun Aida)

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