【侍ジャパン】サヨナラ打の坂本がグラウンド外で見せた絶妙の「超気配り術」

坂本のサヨナラ打で侍ベンチも沸いた

五輪初戦となった28日のドミニカ共和国戦(福島)を4―3の劇的逆転勝利で飾った侍ジャパン。サヨナラ打を放った坂本勇人内野手(32=巨人)はグラウンド外でも絶妙の「超気配り術」を発揮。チーム最年長も白星発進に大きく貢献した。

意地と執念の逆転劇は1―3の9回一死から始まった。柳田(ソフトバンク)の内野安打と近藤(日本ハム)の右前打で一、二塁とし、村上(ヤクルト)の右前への適時打で、まず1点。なおも一、三塁から甲斐(ソフトバンク)が一塁線へ同点のセーフティースクイズを決め、トリを飾ったのが通算2061安打の坂本だ。一死満塁から狙いすましたように初球のツーシームを振り抜き中越えへ。劇的な逆転サヨナラ勝ちに侍たちはベンチから一斉に飛び出し、グラウンド上で歓喜の輪をつくった。

「まずは初戦勝って正直にほっとしているという気持ちが一番です」。プロ15年生の坂本も重圧と戦っていた。「試合序盤はすごい重い雰囲気で試合が進んでいるなと僕もプレーしながら思っていた。ベンチではみんな声を出してくれていましたし、最後ああいう最高の形でつないでくれて、いい結果に良かったなと思います」と安堵の表情を浮かべた。

侍先発の山本(オリックス)が6回2安打無失点と好投。しかし打線は相手先発メルセデス(巨人)に6回まで1安打と苦しんだ。7回に1点をかえしたが、8回一死二塁から吉田正(オリックス)の左前打で二走の山田(ヤクルト)が一気に本塁を狙ったが、タッチアウト。終盤まで重苦しい展開となった。

大一番を前に稲葉監督やコーチ陣は「特に精神的に追い詰められているように見えた」(侍ジャパン関係者)。そんな中で「超気配り術」を発揮し、巧みにフォローしていたのが坂本だった。

「稲葉監督も食事中に鬼の形相で何かを考え込むなど焦燥感がにじみ出ていた。コーチ陣もピリピリした感じになっていることが多く、周囲からは『大丈夫なのか』と心配する声が出始めていたんです。そこで助け舟を出したのが坂本でした。稲葉監督やコーチ陣に率先して歩み寄り、時には首脳陣をいい意味でイジったりして笑いも取っていたと聞きます。さすがは坂本です」(同)

侍ジャパンは坂本のグラウンド内外での活躍で救われたといっても過言ではない。稲葉監督の方針でキャプテン制を採用していないが、紛れもなく主将の働きだ。

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