【五輪取材班便り】28日午前10時半、野球日本代表「侍ジャパン」の初戦が行われた福島県営あづま球場の入り口には、多くの警備員と大会関係者が集まっていた。
会場スタッフも“野次馬”となって注目する中、国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長(67)が車から登場。この日は王貞治氏(ソフトバンク球団会長)らとともに始球式セレモニーに参加し、その後はスタンド席で関係者の説明に耳を傾けながら興味津々で熱戦を見守った。
試合は9回裏、坂本勇人内野手(巨人)の劇的なサヨナラ打で日本が快勝。復興五輪の象徴でもある福島の地で最高のエンディングを迎えたが、この瞬間をバッハ会長は見ていなかった。0―0で迎えた6回裏、日本の攻撃中に球場を後にしていたのだ。
皮肉なことに、バッハ会長が席を立った直後から試合は動いた。7回にドミニカが2点先制、日本が1点を返し、そして9回裏のドラマにつながっていった。
野球・ソフトボールは今大会を最後に正式種目から外れることが決定済み。バッハ会長は28年ロス五輪で“復活”のカギを握るとも言われている。もうちょっとだけ見てくれれば、野球の醍醐味を存分に味わってもらえたのに…。そんな野球関係者の“本音”が聞こえてきそうだ。