山の奥に眠る共生の跡 やんばる〈ルポ〉選定地域を歩く〈沖縄・奄美 世界自然遺産登録特集〉

 亜熱帯照葉樹林の森が広がる沖縄島北部のやんばるの森。ヤンバルクイナなど、世界でここにしかいない固有・希少動植物が息づく。8日、東村観光推進協議会の妹尾望さん(43)ら地元ガイドの案内で、東村福地ダムの湖面をカヌーで渡り、「秘境」と呼ばれる森に入った。

 「キュッ、キュッ」。ノグチゲラの高い鳴き声が聞こえる。ダム湖に接する木々の幹には、ノグチゲラが開けた巣穴が見えた。カヌーをこぐこと40分余りで対岸に着く。イタジイやオキナワウラジロガシが茂る。こけむす湿った地面や沢を歩くと、カエルなど小さな動物に出合う。薄暗い樹林の下には、ツルランが美しい純白の花を咲かせていた。

森を進んで行くと、炭焼き窯や馬道(うまみち)の遺構が目に入る。「人々は森の恩恵を受けてきた。その痕跡が今も残っている」と妹尾さん。ここだけに限らず、国頭村などやんばるの森の至る所に自然と共生する人々の営みの跡が残っている。
(琉球新報・長嶺晃太朗)

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