池江璃花子が示した〝女王〟の存在感 競泳関係者は「3年後の飛躍」に太鼓判

池江璃花子

すべては3年後のために――。東京五輪・競泳混合400メートルメドレーリレー(29日、東京アクアティクスセンター)、予選2組で登場した日本チームは、3分44秒15の6位でフィニッシュ。全体9位で決勝進出は逃したが、白血病で長期休養していた池江璃花子(21=ルネサンス)がアンカーの自由形で前半から果敢な泳ぎを披露。収穫と課題が垣間見えたレースになった。まだ万全な状態とは言い難いが、競泳関係者は存在感の大きさを改めて実感。今後の飛躍に太鼓判を押す声も上がっている。

わずか0・21秒届かなかったが、日本チームは躍動した。第1泳者で背泳ぎの小西杏奈(ガスワン)がいきなり自己ベストとなる59秒85をマーク。第2泳者の佐藤翔馬(東京SC)も100メートル平泳ぎ予選のタイム(24日、1分00秒04)を上回る59秒84を記録し、第3泳者の松元克央(セントラルスポーツ)へつなぐと、驚異の追い上げを見せ、7位で池江にバトンを託した。池江は前半から攻めに攻め、折り返しの地点で4位争いに絡んだものの、後半にスピードを上げることができず、2組で6位に終わった。

目標にしてきた決勝進出はならなかったが、複数の競泳関係者が「池江の存在はチーム力を上げていく」と話していたように、池江に触発されたメンバーたちが好記録で泳いだ。1992年バルセロナ五輪競泳女子200メートル平泳ぎ金メダルの岩崎恭子氏も「今までの池江選手のたどってきた軌跡を見ればみんな刺激を受けると思う。泳ぐのだけでもすごいのに、五輪にも出場している池江選手の存在はみんなの力になっている」と分析。30日夜には女子400メートルメドレーリレーが控えているだけに、池江の存在はプラスになりそうだ。

この日の池江はある課題を持って臨んでいた。「体力がどこまで持つか」。白血病を乗り越え、五輪の舞台に帰ってきたとはいえ、以前の状態に戻ったわけではない。岩崎氏いわく「筋力を徐々に増やしていく必要がある。一気に増やしてしまうと故障することもあるので、今は徐々に筋力を増やしていっている段階」。水泳人生の〝第2章〟を歩み始めたばかりだからこそ、分からないこともたくさんある。レース後、池江は「前半はすごく気持ちよく速く泳ぐことができた。後半バテてしまったけど、しっかり最後の食らいつきができたことは良かった。自分がどこまで持つかっていうレースを経験してみたかったので、前半からしっかり入れた」と手応えを口にした。

池江が見据えるのは3年後のパリ五輪。この日の取材でも「3年後はバタフライでメダルを取りたい気持ちがある」と決意表明。当然、メダルを狙う能力は兼ね備えており、東海大学水泳部監督で16年リオ五輪競泳日本代表のコーチを務めた加藤健志氏は「璃花子のずば抜けた水感(水をとらえる感覚)は間違いなく天才。璃花子も金メダリスト並みの水感は持っている。いわゆるセンスですね」と絶賛するほどだ。

ただ、無理は禁物だ。加藤氏は「肩の筋肉とかはだいぶついてきたが(発症前の)3年前に比べると、まだ全然筋肉がない。やっぱり焦らずに東京五輪はとにかく健康で乗り切る。終わった後に健康であることが一番大切」と指摘した上で「本当に健康なら次は3年後にパリ五輪がある。しかも年齢的にもちょうどいいところに入ってくる。パリ五輪や(28年の)ロサンゼルス五輪とかで、すごい挑戦をする姿が見られるのが理想というか、願いですよね」とエールを送った。

周囲の想像を凌駕する東京五輪の舞台に立った池江。さらなる奇跡へ、一歩ずつ道を切り開いているようだ。

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