「共通点は、マイノリティだけど強者にみえること」。乙武洋匡が三浦瑠麗さんに迫る

選挙ドットコムでは、乙武洋匡氏をMCに迎え選挙や政治の情報をわかりやすくお伝えするYouTube番組「選挙ドットコムちゃんねる」を毎週更新中です。

今回は2020年2月8日に公開された対談の様子をご紹介。ゲストは国際政治学者・三浦瑠麗さんです。メディア・政治家の役割や投票率について伺いました。

 

共著本のタイトルに込められた思い

最初の話題は2人の共著本について。『それでも、逃げない』という本のタイトルは三浦氏がつけたのだそうです。どのような思いが込められているのでしょうか?

三浦氏は、「私達の共通点はマイノリティだけど実際には強者にみえるということ。攻撃を浴びやすいから退きそうにもなるが、結局何かを聞かれたら答えてしまうし、何かを求められたらそれに応じてしまう傾向がある。結果論として逃げなかった。だから、“それでも“にした」と話しました。

乙武氏は、「女性として生きることでどういう制限がかかり、どういう不利益が生じるのか。具体例を含めて三浦さんから聞いたことで、他のマイノリティ性がある人の生き辛さにどれだけ寄り添い、自覚して生きてきたのかを反省させられた。いかに無自覚であったかを考えさせられた」と話し、「ぜひ多くの方に読んでいただきたい」と紹介しました。

メディアや政治家がすべきことはリードすること

乙武氏は、「教育は票にならないとよく言われる。教育にお金を使うことは国の投資として大事なところだが、なかなか力を入れてくれる政治家がいない。“未来のため“は票にならないとずっと感じていたが、その通りですか?」と尋ねます。

三浦氏は、「明らかに正面から聞けば人間は現世利益を選ぶ。例えば、自分と関係ない人に対する増税には大賛成するが、自分に関係がある増税になると大反対する」と話し、「そのまま世論を取り込んで政策に入れていたら破綻する。国民投票を頻繁に行うスイスは、国民投票の結果を聞かないといけないから矛盾を調整するための膨大な官僚の努力や人員が必要になる」と紹介しました。

三浦氏によると、代議制の良いところは、意見を聞いた上で必要なものを取り入れることや、自分がある程度の仮説を持って聞くところにあるのだそうです。ところが、新聞社をはじめとする多くの世論調査は何の目的もなく聞いているところがあり、「どうしたいの?」とリードする気がないのだとか。

三浦氏は、「東京都知事のこれまでの戦い方も、大体“何かを止める“だった。負担と受益との対応関係が明らかでないと、何か巨大利権のようなものを止めようとすると楽に賛成が集まる」と話し、「本来メディアや政治家がすべきことはリードすることで、それをやったのが小泉元総理。“民間にできることは民間に任せるべきだ“という言葉を浸透させて、郵政解散で大勝利を収めた。あの構造改革のときの動きは“将来のための投資だから“ということで、何となく必要そうな気がしてみんながついていった。将来の子ども達のためにリードして概念で示すことが大事だ」と述べました。

乙武氏が、「痛みを伴う政策をやらないことに対しての解決策はないのですか?」と質問すると三浦氏は、「自民党がこれまであまり批判されない政治をやってきたのは、利益団体の声を吸い上げる利害調整の政治だったから。安倍政権ではその部分が弱まったから批判されたが、リーダーシップのあるタイプの政権がずっと言い続ければ、人はまともなことなら聞いてくれる。女性活躍や金融緩和などは安倍政権がずっと言い続けた結果、実現した」と話しました。

投票率は今のままでも構わない!?

乙武氏は、「政治リテラシーが低い人は甘い言葉を言ってくれる政治家に流れやすい。そう考えると、投票率を簡単に上げてしまって良いのかという疑問も出てくる」と投げかけます。

三浦氏は、「投票率は今のままで構わないと思っている。“投票に行かなければならない“と危機感を覚えた時には、割と投票率が低い若年層でも投票に行く。今はみんなが危機感を持っていないから突発的な大惨事は避けられる。だが、徐々に改革すべきことが進まない」と話しました。

三浦氏曰く、政治的なディベートをすればするほど価値観は分かれていくのだそうです。「それでも政権交代したほうが良いというのが私の考え。だから、何をめぐってバトルするかを考えたほうが良い。体罰や女性の権利などは党派でほとんど価値観が変わらない。むしろ意見が分かれるところに議論を集中させたら良くて、それが憲法改正と日米同盟をめぐる問題。そして、成長重視か分配重視かだ」と述べ、「“価値観“を代表してくれる政党を作ることや、社会政策を保守の立場・リベラルの立場でしっかり議論することが、今の社会にも即していて良いと思う」と話しました。

乙武氏は山猫総合研究所の意識調査の仕方に共感しているそうで、例としてエネルギー問題を挙げました。「原発も化石燃料も、賛成か反対かを個別に聞いたら反対と答えたくなるのが人情だ。日本に必要なエネルギー量はどの程度なのかを把握して、それをどういう割合でまかなっていくのか問わないと意味がない」と話します。

これに対し三浦氏は、「(人々は)自分の仮想敵はこういう存在だと決めつける傾向にある。私の価値観調査で重要な点は、安全保障といっても所詮は憲法と日米同盟以外に差は出ないということ。そこに対する気付きが重要だ」と話しました。

三浦瑠麗氏プロフィール

1980年、神奈川県生まれ。国際政治学者。東京大学大学院博士課程を修了後、東京大学政策ビジョン研究センター特任研究員、日本学術振興会特別研究員、青山学院大学兼任講師などを務め、現在は山猫総合研究所代表取締役。執筆、言論活動を続ける一方で、テレビ番組でも活躍している。

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