プロ野球西武ライオンズの元本塁打王、エルネスト・メヒア内野手の退団が7月26日、球団から発表された。
シーズン途中での突然の退団は驚きだが、その理由も新型コロナウイルスの影響による異例なものだった。
「今、世界中がとても困難な時期にあり、地球の反対側から来た私にとって、家族がいないことは本当に大変だった」と明かしている。
ベネズエラ生まれの35歳。2014年にシーズン途中の5月に加入すると本塁打を量産し、チームに欠かせない存在となった。
初打席は同年5月15日の日本ハム戦。いきなり初出場初打席で本塁打を放つ派手なデビューを飾ると、その年に34本塁打でタイトルを獲得した。
今季で8シーズン目。当初の輝きは相手球団の研究や、同じ一塁手として山川穂高が台頭したこともあり年々失われていった。
それでも年俸3570万円(推定)で日本にやってきた助っ人は、17年から19年までの3年間、年俸5億円(推定)の契約を結ぶ成功者となった。
そんな大物外国人が日本との決別を決断したのは、コロナ禍による環境の激変だった。
昨年来、猛威を振るう新型コロナウイルス。日本国内の状況は沈静化するどころか、逆に拡大の一途をたどっている。
開催が危ぶまれた東京五輪は何とか開幕したが、東京の新規感染者は7月28日に過去最多となる3000人を超して、この先も予断を許さない状況だ。
日本人にとっても生活様式が一変したコロナ禍だが、外国からやって来る選手たちにとっての苦しみは大きい。
来日、帰国の際の防疫に費やす気苦労は自身の調整に影響を及ぼす。加えて、もっと大きな問題が家族である。
日頃から選手は遠征に出る機会が多い。平時ならそれでも日常生活に支障はないが「ステイホーム」のこのご時世。友達も少なく言語の壁もある家族は、来日を諦め母国での生活を余儀なくされる。
6月のことだ。西武球団ではメヒア以外にもザック・ニール、リード・ギャレット両投手を含めた3家族のビデオレターを球場内で紹介した。心温まる光景で、ニールは涙を流した。
これが、多くの外国人選手が置かれている現状なのだ。
西武では、メヒア退団の同時期にギャレットの新型コロナウイルス感染も明らかになった。
チームは五輪ブレークのため調整期間だったのが救いだが、今後の回復次第では後半戦に貴重なセットアッパーを欠くことにもなりかねない。
各チームとも戦力の中で、外国人選手が占めるウエートは大きい。
西武がドタバタしている間に、ソフトバンクやオリックスでは新外国人選手の入団を発表し、夏以降の戦力アップを図っている。
日本で通算142本塁打、406打点。
「母国に帰っても、ライオンズを応援しています」とファンへのメッセージを残して、愛すべき助っ人メヒアは家族の元へ帰っていった。
荒川 和夫(あらかわ・かずお)プロフィル
スポーツニッポン新聞社入社以来、巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)などの担当を歴任。編集局長、執行役員などを経て、現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。