決勝進出! 池江璃花子の恩師が語る〝復活への苦闘〟と〝意外な素顔〟

タイムを見て喜ぶ(左から)池江、小西、渡部

〝超人〟を超えた。競泳女子400メートルメドレーリレー予選(30日、東京アクアティクスセンター)で池江璃花子(21=ルネサンス)が第3泳者のバタフライで57秒50をマーク。チームは全体6位となり、決勝進出に貢献した。白血病での闘病生活、厳しいトレーニングを重ねて今大会はリレー3種目に出場。小学校時代の恩師が、完全復活へ向けて大きな一歩を踏み出したヒロインの苦闘の一端と素顔を明かした。

〝三度目の正直〟だ。日本チームは背泳ぎの小西杏奈(ガスワン)、平泳ぎの渡部香生子(JSS)、バタフライの池江、自由形の五十嵐千尋(T&G)で臨み、全体6位で決勝進出。レース後、池江は「リレー種目、個人で決勝に残っていないレースが多かった。今回はどうしても男子と一緒に決勝に残って、また決勝の舞台で戦いたいという気持ちでレースに出ました」と振り返った。

出場したリレー2種目はすでに予選敗退。最後の種目でようやく〝鬼門〟を突破した。ただ、自身の泳ぎについては「57秒前半で泳ぎたいなと思っていたんですけど、最後はへばってしまった」と課題を挙げ「(8月1日の決勝までの)2日間で泳ぎを修正したい」と語った。

当初、東京五輪が予定されていた昨夏は復帰レースに向けて練習に励んでいたタイミング。とても五輪に出場できる状態ではなかったが、1年延期の運命に導かれるように大舞台に立った。池江が小学生時代に通った東京ドルフィンクラブの清水桂氏(46)は「周りの人がみんな言うんですよ。『璃花子は何かあるよね。ただ速いだけじゃない、何かすごいものを持っているよね』と。たしかに延期したとはいえ、到底間に合うとは思えなかった。僕も五輪どうこう考えていなかったので…」と打ち明ける。

一昨年に池江の白血病の一報が入ったときは「真っ白になった」という。ただ、本格的な治療を前に病室を訪れると「超元気なんですよ。髪をバッサリ切っていましたけど、ネットフリックス見たりして。『楽しそうだね』と会話しました」。しかし、闘病中はLINEを送っても既読がつかなかった。「(19年)夏ごろには退院すると聞いていたけど、9月になっても退院しないし、返事が来ない。相当つらい思いをしたんだと思います」

そのまま月日が流れた一昨年12月。退院したばかりの池江がクラブにひょっこり顔を出した。「うれしさとビックリで泣いちゃいましたね」と清水氏。続けて「『LINEしろよ(笑い)』と言いました。本人はアハハッて感じでしたけどね」と振り返る。

近い立場で見守ってきただけに心配は尽きないようだが、今年4月の日本選手権で4冠を達成して「もう大丈夫だと思いましたね」。選手権後には知人宅で小さな祝勝会を開催。池江は気を許す仲間に「囲み(取材)のときとプライベートの話し方が違い過ぎて引くわ」「コメントは神から降りてくるの?」などとイジられていたという。

小学校時代の池江を〝宇宙人〟とも呼んでいた清水氏は「何もかもが規格外すぎて、超人を超えて『超・超人』ですよ」と、新たなニックネームを〝命名〟して今後のさらなる活躍を期待した。

その池江は決勝に向けて「みんながワクワクするような興奮するような、そういうレースができたらいいなと思います」。今大会最後のレースで、恩師や支えてくれた人たちに感謝を伝える。

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