阪神・井上一樹ヘッドを直撃〈後編〉 怪物・佐藤輝は「〝年輪〟が増えれば松井秀喜クラスに」

井上ヘッドコーチ(左)は佐藤輝のスター性を絶賛した

16年ぶりのリーグVを目指す阪神で今季からヘッドコーチに昇格した井上一樹コーチ(50)を直撃インタビュー。後編は〝怪物新人〟佐藤輝明内野手(22)のこと、そして後半戦について。虎躍進のキーマンが大いに語った。

――今年は中野、佐藤輝と2人の新人が定位置を獲得。躍進を支えている

井上ヘッドコーチ(以下、井上ヘッド) 中野は社会人を経験しているってところも大きいし、ブレないというか、本番に強い子。佐藤輝はあれだけ騒がれて大丈夫かなって思うんだけど、性格的に、あまり気にしないタイプ。新人で常に球場に来るときも、帰るときも2人は一緒。あのときこうだったよな? みたいな話が常にできるのは大きいと思う。レギュラーでやっていくためのいいパートナーかなと。

――佐藤輝をメディアは「怪物」と表現しているが、どう見ている

井上ヘッド 今みたいに観客数に制限がある状態ではなく、例えば満員の甲子園を想定して。輝の打席に何人が注目するか?と言えば、全員なわけよ。突拍子もないワンバン振ったり、クソボール振って三振が続いたとしても。やっぱり他の選手では打てないような一発の魅力、スケールのデカさ。ウチの看板商品になってもらわないといけない存在。

――どんなイメージを抱いているのか

井上ヘッド 僕が現役のころは左の強打者がいっぱいいた。例えば松井秀喜。当時は何だコイツ、すっげえなっていう対象。彼の場合は高卒入団で、輝明は大卒だけども年数を経ていけば、もっとスケールのデカい選手になるであろうと思いますよ。

――今後「こうなってほしい部分」などは

井上ヘッド 本当のスターになるには「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という言葉があるけど、天狗になるようなことがあれば僕が「コラーっ」て言わないといけないし、叱って教育していく部分もある。

――技術面では

井上ヘッド 三振して、その後バットに当てにいくような小さな打撃はしてほしくない。そこは、こちら側の忍耐も必要。それを繰り返すことによって彼も頭で考え、アドバイスを聞き、そして自分で行動する。そういうことが、徐々にできてくるはず。いわゆる経験値というところで。

――〝成熟〟は早ければ早いほど理想的か

井上ヘッド 彼のなかで〝年輪〟というものが、まだ全然できていない。それが二層、三層というふうに増えてきたときには、松井秀喜クラスの選手になれる。リーダーになるぐらいの性格とか態度、成績が伴っていけば、自然とね。あとは彼の自覚次第。地元出身で地元球団に入って。矢野監督が4球団競合で引き当てたわけでしょ? これはもう運命だと思う。

――8月13日からリーグ戦が再開。残り59試合をどう戦う

井上ヘッド 強いチームは後半戦に強い。競馬の末脚じゃないけど。前半どんだけ飛ばしていても差されたら一緒。首位で再スタートするのは今、こういう位置にいるってだけの話なので。でも、どうしても1位になりたいという気持ちは監督以下、俺らはみんな思ってるんで。選手をどう、くすぐるか躍らせるかって、今、考えているところですね。

――後半はさらなる力の上積みが欲しい。前半で力を出し切れなかった選手は特に?

井上ヘッド その通りですね。例えばエースと4番。今年の前半戦は、エースの役割を果たしたのは青柳。4番は大山を打たせたいこだわりもあるけど、その他チームを見渡せばどうなんだ、っていう。岡本(巨人)、村上(ヤクルト)、オースティン(DeNA)鈴木誠(広島)、ビシエド(中日)。数字で負けているのをガンガン意識してもらいたい。勝つために4番が打たないと勝てないってのは、本人も分かっている、去年も後半、量産して28本塁打まで打った。「後半は俺が引っ張る! ついてこいや輝明!」ぐらいの気持ちで。そういう盛り上がりは欲しいですね。

――自身の抱負は

井上ヘッド 結果の矢面に立つのは監督。やばいな~って時にはもちろん、支えていきたい。時には椅子になり、松葉づえになるぐらいの気持ちで(笑い)。これまで同様、俺は監督の考えを選手に広め、選手の言葉を拾って監督に伝え、チームの輪を作る。周りから「一体感あるね」って言われるようにね。

――キャンプ前に「今年は爪痕を確実に残したい」と。それは16年ぶりの…

井上ヘッド 研いでいるから今、一生懸命! 「サクッ」みたいな小さなヤツじゃないのよ、残したい爪痕は。当分、消えないだろうなっていう「ガサッ」っていう、でっかいヤツ。なんで、その爪をね、研ぎに研いでいる(笑い)。うちのタカ連中(選手)はね、能あるクセにまだ爪を隠しているから。「出し惜しみしなさんな」って言わないと、と思っているよ。

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