松山英樹 あと一歩で五輪メダル届かず… ゴルフ界の “重鎮” が指摘する2つの敗因

思うようなラウンドとならず…思わず天を仰ぐ松山(ロイター)

重鎮の目に映った敗因とは――。ゴルフ男子最終ラウンド(1日、埼玉・霞ヶ関CC=パー71)、2位スタートの松山英樹(29=LEXUS)は通算15アンダーでホールアウト。7人が並んだ銅メダルプレーオフ(PO)の1ホール目で脱落し、4位に終わった。この結果に、日本ゴルフツアー機構(JGTO)元会長の小泉直氏(82=現JGTO顧問)は、あの〝歴史的快挙〟を一因に挙げた。

メダルにはあと一歩届かなかった。松山は15番パー4で1メートルのパーパットを外してボギーとすると、銅メダル争いは大混戦。16、17、18番では4メートル以内でバーディーチャンスにつけるが、全て外して7人による異例のPOへと突入した。

スタートの18番パー4。ティーショットでフェアウエーをキープしたが、2打目をグリーン左のラフへ。3打目のアプローチを寄せきれず、5メートルを残した。これを決めきれず、銅メダル争いから脱落した。

松山は「トップに追いつき、追い越せる雰囲気を感じていたが、最後がうまくいかなかった。金メダルを目指していたが、正規の18番では(首位と3打差で金メダルは)難しかったけど、(バーディーパットを)決めれば銅メダルはわかっていたので、決めきれなくて悔しさしか残らなかった」と力なく振り返った。

4月には日本人初となるメジャー「マスターズ」制覇の快挙を達成。金メダルへの期待が高まっていた中、先月初旬に新型コロナウイルスに感染して調整に狂いが生じたのは誤算だったものの、世界レベルの技術を随所に披露して優勝争いに絡んだ。それでも表彰台にすら届かなかったのは事実だ。

小泉氏は実力を高く評価するからこそ「厳しいことを言うようだが『マスターズ』に勝って、どこかで気が緩んでしまっているかもしれない」と〝辛口〟の採点。松山にとって東京五輪の金メダルは大きなモチベーションだったが、ゴルフ界で最も栄誉あるタイトルを獲得して、心のどこかにスキが生まれた可能性があるという。

技術的には、やはりパッティングがスコアを伸ばし切れなかった要因。15番や5番パー5のバーディーパットなど、この日は1メートルを外す場面も目立ち、通算18アンダーで金メダルのザンダー・シャウフェレ(27=米国)をとらえきれなかった。

かねてワールドクラスのショットに比べると課題となっていただけに、小泉氏は「今日は特に1メートルでも見るのが怖かった」と敗因に挙げた。その上で「彼はショットの延長線上にパットがあるという考えでカツンと打つタイプ。これだとフィーリングが出しづらい。世界のトップ選手と同じように別物だと認識してほしい」と改良を求めた。

さらに、すでに完成されたと思われる打ち方についても「これからでも変えることはできる。そうすればもっと強くなる」とさらなる成長を期待。厄介なのは「マスターズ」後遺症だけだ。

「心の底から目指したいことが湧き上がらないと難しい。例えば(ローリー)マキロイは勝ちまくっていたころに比べると、近年は物足りない成績だが(プレーから)〝これくらいでいいや〟と感じる。松山にはそうならないようにしてほしい」

メダルを逃した松山は直面した課題を克服して、次なるビッグタイトルを獲得できるか。

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