日本の課題は何?評価する女性政治家は誰?乙武洋匡が三浦瑠麗さんに聞く!

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今回は2020年2月10日に公開された対談の様子をご紹介。ゲストは国際政治学者・三浦瑠麗さんです。日本の課題や女性政治家の現状について伺いました。

 

首相はどういう考えの持ち主が良いの?

外交安全保障がご専門の三浦氏は、「アメリカとの関係がもたらす脆弱さをリスクヘッジして動いてくれる人が必要だ」と話します。

続けて、「リスクヘッジは中国に抱きつくという意味でもなければ、戦前のように軍事大国になるという意味でもない。アメリカにべったり依存しているだけではリスクがあると認識し、バランス的な外交をするということだ」と話し、「安倍政権時代、今までであれば米国との関係を高らかに謳い上げるところを、中国やロシアに対する言及が目立った。それを時代感としてしっかり踏まえていることが大前提だ」と述べました。

また、三浦氏は経済の観点からも言及します。「安倍政権が示した成長戦略には、IoTやAIのように色んなバズワードが飛び交っていた。例えばバイオベンチャーひとつとっても、何が筋が良くて何が筋が良くないかなんて政治家にわかるわけがない。政治家が気を付けたほうがいいのは、最先端の人と会ったり、経済産業省に指示を出したりすることで仕事が終わったと思ってしまうことだ」と話しました。

三浦氏は政府が行っている不当な介入を減らすことが必要だとし、政策金融の見直しについて指摘します。

「新しい企業を育てたいと思うのであれば、低金利でお金を貸す政策金融のシステムをやめさせなければならない。低金利が受けられる特例は、中小企業であればほとんど当てはまってしまう。政府が主導する国策的な金融が生産性の低いところに回り続ける結果として、銀行はリスクと目づけする能力を失ってしまう。これでは中国と変わらない。日本政府は我々の経済に対してどのような介入を行っているのかしっかり調べ、それを覆すようなことが必要だ」と話しました。

 

日本が経済面で抱えている課題

乙武氏が、「経済に強い政治家はあまりイメージがない」と投げかけると三浦氏は、「今までそういう政治家教育をしてこなかったから、あまりいない」と話し、「どんどん起業しなさいと政府が言うわりには、助成金や補助金のことを書いたリストがわかりづらい。そして、お金を投じた分がどれだけ日本の経済成長につながったかを誰も検証していない。官庁からすると、いくらお金を使ったかというのは実績になるが、アウトプットのところが検証されていないから大きな問題だ」と指摘しました。

乙武氏も、「日本が抱えている大きな課題だと思うことは、芸能人の税金逃れや政治家の不祥事には烈火の如く怒るのに、税金がどう使われているかについては甘いことだ」と話します。

三浦氏は、「私は財政出動に賛成の立場だが、何に(お金が)使われているのかをみなければいけない。アメリカでインフラ投資をしようとすれば、官から出るお金よりも民から出るお金のほうが多かったりするのだが、日本は官が全部自分でやらないと気が済まない。日本は公に頼らないと生きていけない経済をどんどん作り出し、それが金融機関にまで影響してしまっている」と話しました。

女性政治家の現状について

2人の著書『それでも、逃げない』のなかでは、何名かの女性議員についても批評されているそうです。

乙武氏が、「一番衝撃的だったのは(三浦氏が)ある女性議員のことを“虚無“と表現されたことです」と明かすと、「失礼な話ですよね」と三浦氏。続けて、「政治家はものすごく意味のないことに時間をとられてしまうから、本質主義でない考え方を持っている人が政界に多くいることは仕方ない。でも、そうだとしたらせめて真っ当なバランス感覚を持っている人が政治家になって欲しい」と話し、女性政治家の現状についても言及します。

「女性でバランス感覚を持っていると様々な社会的圧力に柔軟に対応しちゃうから、政治家になろうとは思わない。ある意味で変なリスク感覚をお持ちの方が(選挙に)出る」と話しました。

これに対し乙武氏も、「確かに名前が挙がってくるような女性政治家は、オジサン化した女性だよねと言われることが多い」とコメント。三浦氏は、「なぜそうなるかというと出世コースの問題だと思う。女性は1本釣りされて、総理に糾弾してこいとアタックドッグ役になりやすい。そんな育てられ方をした人が大臣になったとき、バランスのとれた判断能力はない。男性議員と同じ育てられ方さえしていれば、名誉欲ばかりある人でもまともになるはず」と話しました。

乙武氏が、「バランス感覚があると思う女性政治家はいますか?」と尋ねると、「扇千景さんはバランス感覚があったと思う」と話し、続けてアメリカの女性政治家の名前を挙げました。「2020年の民主党候補者選びに出ていたエイミー・クローブシャーは好き。『ニューヨーク・タイムズ』が彼女とエリザベス・ウォーレンを推薦すると言っていたが、このように複数選択肢があると比較しやすい。ヒラリー・クリントンの時は女性といえばヒラリーで、女性の肉身を全て彼女が背負った感があった。そうすると、よっぽど人格者であるとか、よっぽど能力があるとかじゃないと、あれだけの攻撃に耐えて深い落ち着きのある声で話すなんてできない。女性政治家が育つ難しさは、国内外問わずあるんじゃないかと思う。クオータ制と言うと嫌がる人もいるから、文明国ならそうだよねという感じで事実上女性議員を半数にすればいい」と話しました。

 

三浦瑠麗氏プロフィール

1980年、神奈川県生まれ。国際政治学者。東京大学大学院博士課程を修了後、東京大学政策ビジョン研究センター特任研究員、日本学術振興会特別研究員、青山学院大学兼任講師などを務め、現在は山猫総合研究所代表取締役。執筆、言論活動を続ける一方で、テレビ番組でも活躍している。

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