【山崎慎太郎コラム】ブライアントは中日より近鉄の水に合ったんでしょう

ブライアントの大爆発で西武を撃破

【無心の内角攻戦(6)】1989年はブルーサンダー打線の破壊力がすごいオリックスがずっと首位を走っていたんですが、夏場にだんだん落ちてきて西武、近鉄との三つどもえになりました。オリックスは前年に阪急から経営が代わったばかり。ちょうど10月19日に身売りの発表だったからこっちが大変な日。ビックリでしたけど、それどころやなかったですからね。近鉄も10・19の悔しさがあったので89年は優勝したい気持ちがもっと出てきていました。

残り1か月で大混戦になり、首位西武と10月10日から敵地3連戦になりました。2ゲーム差でここで負けたら終わる…。前年、10・18で僕が投げて10・19につなげたのと同じ状況になり、10日に僕が先発、11日が高柳出己さんとこれも10・19と同じ並び(笑い)。10・19も10・18がないと起こらないし、今回も10・10がないと何も起こらない(笑い)。直接対決だったんで前年の戦いとは少し違いました。僕は渡辺久信さんと投げ合い、終盤にリベラの勝ち越し本塁打で勝利できた。

翌11日が雨天中止となり、12日がダブルヘッダーに…。僕はさすがに前年みたいに熱は出ていなかったけど、ベンチには入れず、ベンチ裏の通路の端でモニターを見ていました。勝つもんや、じゃなくて勝つしかない試合。第1試合は高柳さんが4失点し、打線は郭泰源さんに苦しみながらもブライアントが満塁弾を含む3連発の大爆発で6―5と逆転勝利。満塁でブライアントに回ってきた時「これでホームランならオモロイな」言うていたら本当にそうなった(笑い)。西武の方が受け身に入って硬かったでしょうし、こっちはいつも以上のイケイケですよ。

ブライアントは第2試合も49号を打って神がかり的な4打数連続本塁打ですよ。何かやってくれそうな雰囲気を持っている。三振も多く、守備もうまいわけではないのに仰木彬監督がずっと使うのはやはり一発があるから。荒々しくて、あれだけ振られたら投手も嫌でしょう。三振するけど、当たりゃあ飛ぶ。ブライアントは中日の二軍にいて前年6月にトレード移籍してきたんですけど、近鉄の水に合ったんでしょう。自由ですもん。

ふだんは陽気なやつ。長いこと日本にいたのに日本語を覚えない(笑い)。タフィ・ローズみたいなタイプじゃなく、全然話そうとしなかったですね。試合前の打撃練習から集中していたし、僕ら投手は外野でアップしているから打球が飛んでくるのが怖かったです。でも彼のスイング見るのは楽しい。ヘッドが重くてグリップが細いバットを思いきり振るし、細いから三振したら怒ってバキッてすぐ折れるし…。あんな重いヘッドを振ってたら首も痛くなりますよ。そのたびにはり治療してました。外国人なのにはり治療ってするんやって。そんな打者が味方にいるので相手へのプレッシャーはすごかったと思います。彼の活躍で優勝が見えてきた。

© 株式会社東京スポーツ新聞社