社長の平均年齢は62.49歳、高齢の社長ほど業績悪化が鮮明に 「全国社長の年齢調査」

 全国の社長の平均年齢は62.49歳で、前年から0.33歳伸びた。調査を開始した2009年以降、2019年の0.43歳アップに次ぐ伸び率で、社長の高齢化が進んでいる。
 社長の高齢化と業績悪化の関連性は高く、直近決算で減収企業の社長は60代が48.8%、70代以上も48.1%を占めた。また、赤字企業は70代以上が22.3%で最多だった。高齢社長に業績不振が多い背景には、長期的なビジョンを描けず、設備投資や経営改善の遅れが横たわる。
 都道府県別では、65歳以上の人口比率に比例して社長の平均年齢も高くなっている。高齢化が進む県ほど、社長の若返りも遅れている。
 また、2020年に「休廃業・解散」した4万9,698社では、社長の平均年齢は70.23歳と初めて70代に達した。生存企業の社長より7.74歳高く、70代以上が約6割(構成比59.7%)を占めた。高齢化で事業継続を断念する社長が増えていることを示している。

  • ※本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(約400万社)から2020年12月時点の代表者の年齢データを抽出、分析した。前回の調査は2020年6月。「社長」は、代表取締役社長のほか、個人事業主や理事長などを含む。

年齢分布 70代以上が2年連続で最多

 2020年の社長の年齢分布は、70代以上の構成比が31.8%で、2年連続で最多レンジとなった。前年比1.43ポイント上昇した。他の世代では60代と40代、30代以下が構成比を落としたなか、50代が2年連続で構成比を上げた。

社長の平均年齢推移

企業業績は社長の年齢に反比例

 社長の年齢別に直近の企業業績をみると、「増収」は30代以下で54.2%と最も大きく、年齢と反比例する形で70代以上は39.2%と4割を下回る。70代以上は、「赤字」や「連続赤字」の割合が全年代で最も高く、社長の高齢化と業績不振には関連性がうかがわれる。

社長年齢別 業績状況

都道府県別ランキング 平均年齢の最高は6年連続で高知県

 都道府県別では、30道府県が全国平均の62.49歳を上回った。社長の平均年齢の最高は高知県の64.61歳。2015年以来、6年連続トップで、前年の64.25歳から0.36歳上昇した。次いで、秋田県64.53歳(前年2位、64.13歳)、山形県63.96歳(同4位、63.67歳)、岩手県63.90歳(同3位、63.70歳)、長崎県63.76歳(同6位、63.33歳)の順。
 一方、最年少は2年連続で広島県の61.23歳(前年60.93歳)だったが、初めて61歳を上回った。
 このほか、大阪府61.25歳、滋賀県61.51歳、愛知県61.55歳、岡山県61.82歳の順で平均年齢が低かった。
 総務省統計局の人口推計(2019年10月1日現在)から算出した「65歳以上人口比率」をみると、社長の平均年齢が高い高知県は35.2%(全国2位)、秋田県は37.1%(同1位)と高齢化が際立つ。一方、社長の平均年齢が低い広島県は29.3%(同34位)、大阪府は27.6%(同41位)で、全体の高齢化と社長の平均年齢は見合った動きをみせている。

都道府県別 社長の平均年齢

産業別平均年齢 最高は不動産業の64.23歳

 産業別の平均年齢は、最高が不動産業の64.23歳だった。次いで、卸売業の63.50歳、小売業の63.36歳と続く。最低は情報通信業の57.56歳だった。
 年代別の年齢分布では、70代以上の比率は不動産業が39.4%で最も高く、2位の小売業35.0%に4.4ポイントの差を付けた。一方、30代以下では情報通信業が6.0%と突出して高く、40代でも20.3%で唯一20%を上回った。

業種別ランキング 金融やインフラ関連に60歳代の社長が多い

 社長(理事長などを含む)の業種別平均年齢は、農協や漁協など「協同組合」が最高の67.37歳だった。次いで、信用金庫、信用協同組合などの「協同組織金融業」が67.34歳、幼稚園から大学、専修学校まで含む「学校教育」が67.27歳で続く。
 70代以上の社長が占める割合が最も高いのは、「学校教育」の47.8%だった。次いで、「織物・衣服・身の回り品小売業」が45.3%、「協同組合」が44.4%で続く。60代は「銀行業」で64.7%を占めて最も高い。60代の社長は「協同組織金融業」や「鉄道業」、「放送業」、「ガス業」など金融やインフラ関連に多い。
 30代以下と40代では、「インターネット付随サービス業」、「無店舗小売業」、「通信業」がともにトップ3を占めた。ほかにも「飲食店」や「持ち帰り・配達飲食サービス業」など初期投資を抑えられ、参入障壁の低い業種に若年社長が多い。

「休廃業・解散」を選択した社長の平均年齢は70歳を上回る

 2020年に休廃業・解散した企業では、社長の平均年齢は70.23歳で、初めて70代に達した。生存企業の平均年齢(62.49歳)との差は7.74歳で、前年(7.45歳)より0.29歳広がった。
 「休廃業・解散」企業の社長の年齢別分布は、70代以上が59.7%と約6割を占める。代表者の高齢化が事業継続を断念する理由のひとつとみられる。

休廃業・解散企業 社長の年齢分布

 全国の社長の平均年齢は、前年から0.33歳伸びた。2009年の調査開始以来、上昇に歯止めがかからない背景には、事業承継や新規開業(新設法人)の停滞が見え隠れする。
 東京商工リサーチが今年5月12日に発表した「新設法人動向」調査によると、2020年の全国の新設法人数は13万1,238社で、前年比0.1%減(前年13万1,398社)と僅かながらも2年ぶりに前年を下回った。新型コロナウイルス感染拡大に伴って経済活動が停滞し、企業の新陳代謝が進まなかった。
 また、「後継者不在率」調査(2020年11月13日発表)では、57.5%の企業で後継者が不在だった。後継者不在率は、現社長の年齢が60代の企業で40.4%、70代で29.1%、80代以上でも23.5%にのぼる。業績不振企業に高齢社長が多い背景には、事業承継の目途が立たず将来性を見出しづらいため、事業運営に消極的なところがあるかもしれない。
 円滑な事業承継は、後継者の選定から交代まで数年の準備期間が必要とされ、後継者が居ない高齢社長には時間的猶予が少ない。ただし、ビジネスモデルや将来性次第では、全ての企業で承継が実現できるわけではなく、廃業支援も必要になる。事業継続を断念した企業の退出と並行して、新規ビジネスを創出する起業が活発になれば、雇用を含めた地域経済の活性化が望める。そのため、新規開業や事業承継、廃業の支援に向けて政府、自治体と金融機関による多方面的な取り組みが求められる。

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