【山崎慎太郎コラム】仰木さんは目が笑ってないから怖いんです

第2戦に先発し6回途中2失点に抑えた山崎

【無心の内角攻戦(8)】「10・19」の悔しい経験から1年、僕らはついにリーグ優勝を果たしました。10月15日に最終戦を終え、巨人との日本シリーズは藤井寺で21日から。あり得ないくらいのスケジュールで、あり得ないような日本シリーズになりました(笑い)。

僕らはイケイケどんどんのままでいきました。若いって乗せると怖い。長持ちするかどうかはわからないけど、それを仰木彬監督がうまく使っていたと思います。仰木さんて練習中、サングラスの奥から選手をよく見ているんですよねえ。僕はしょっちゅう怒られましたもん。ランニングの途中に「来い」って呼ばれて前日の投球のことの注意をされる。根には持たないし、口うるさく言われるわけでもないけど、目が笑ってないから怖い。負けて「やらかしてる」というのがあった翌日は近づかないようにしてました(笑い)。仰木さんて優しいイメージあるでしょ。きついですよ(笑い)。やっぱ勝負に関しては厳しいです。

ミーティングはやらなくて、たまに全員集めて「今日は勝つぞ」みたいなひと言声をかけたりとかはありましたよ。ズルズルいっている時とか、落ちてしまう手前で声をかけて締めるというのはあったと思います。門限もないんですけど、秋田でふがいない内容で負けた時があって外出禁止になったことはありました。

日本シリーズの巨人戦もデータ的なことの話だけで、ミーティングで監督が何か言ったとかはなく、普段通りのことしかしていない。打席に入ることになるから打撃練習は手がしびれて嫌やな、とかね(笑い)。シーズンの流れのまま入った感じで、まったく同じ。日本シリーズはシーズンと全然別とか言うけど、東京ドームの雰囲気も一緒。終わって1週間なんで、そのままのテンションで行っている。原辰徳さん、クロマティ、駒田徳広さんか…くらいのイメージで、普段通りのミーティングの巨人戦というだけ。勝つというだけで相手とか関係なかったですねえ。

21日の初戦、藤井寺も特別な緊張感もなく入っていった。前年「10・19」とその年の「10・12」のあの緊張感には勝らない。阿波野秀幸さんが投げて大石第二朗さん、鈴木貴久さんが打って4―3と快勝。僕は第2戦の先発でした。勝つためにマウンドに上がっている、という意識で桑田真澄さんと投げ合った。6回途中で勝ちがつかなかったけど、6―3と連勝です。

ところを変えて24日、東京ドームでの3戦目もこれまた加藤哲郎さんが好投し、3―0と快勝。3連勝ですぐに王手をかけてしまい「あれ? これは巨人は強くない?」というか、手応えがない。西武の方が戦力的にも全然強いし、巨人ももっと強いんじゃないのかって思ったのに、こんな感じなのって。3戦目まではみんなそう感じていたと思います。そして勝利投手になった加藤さんからあの発言が…。

☆やまさき・しんたろう 1966年5月19日生まれ。和歌山県新宮市出身。新宮高から84年のドラフト3位で近鉄入団。87年に一軍初登板初勝利。88年はローテ入りして13勝をマーク。10月18日のロッテ戦に勝利し「10・19」に望みをつないだ。翌89年も9勝してリーグ優勝に貢献。95年には開幕投手を務めて近鉄の実質エースとなり、10勝をマークした。98年にダイエーにFA移籍。広島、オリックスと渡り歩き、2002年を最後に引退した。その後は天理大学、天理高校の臨時コーチや少年野球の指導にあたり、スポーツ専門チャンネル「Jスポーツ」の解説も務めている。

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