1984年のロサンゼルス五輪以来となる金メダルを懸け、7日に米国との決勝戦に挑む東京五輪の野球日本代表。直近で野球が正式競技だった2008年の北京五輪で、主力左腕として活躍した独立リーグ・栃木ゴールデンブレーブス(GB)の成瀬善久(なるせよしひさ)選手兼投手コーチ(35)=小山市出身=が下野新聞社の取材に応じ、「楽しむことができれば、おのずと金メダルは見えてくる」と栄冠奪取へ期待を寄せた。
日の丸の「重み」をはっきりと感じたことがある。それは五輪本番の少し前。出場権を懸けた07年末のアジア予選だ。宿敵・韓国戦に先発し「降板後、足の震えが止まらなくなった」ほどの異様な雰囲気を味わった。
その経験が生き、決して本調子で迎えた訳ではなかった北京のマウンドは「楽しさの方が大きかった」という。4試合に登板し12回を19奪三振、無失点で奪三振王に輝く快投を見せた。
その一方でチームはまさかの「メダルなし」に終わった。後にメジャーリーグで活躍する上原浩治(うえはらこうじ)やダルビッシュ有(ゆう)ら実力選手を擁しながら、要所での失策なども響き準決勝で韓国、3位決定戦で米国に連敗。現在の日本代表も「普通にやれば金を取れるメンバー」としながら、「その『普通』ができないのが五輪」と国際舞台で勝ち続けることの難しさを語る。
だが、当時との違いも感じている。それは打力だ。今大会は準決勝の韓国戦で山田哲人(やまだてつと)が終盤に勝ち越しの長打を放つなど接戦の中で打線がつながり、ここまで4戦全勝。「今のチームは各球団の3、4番打者が選ばれていて打ち勝てる。(北京のように)『まず投手が頑張って抑えないと』という重圧はないはず」と指摘した。
決勝は同じく打力自慢の米国が相手で「投手陣は総力戦になる」と分析する。その上で「気負わずに頑張ってほしい」と選手たちへエールを送った。多くの修羅場をくぐってきた成瀬。だからこそ、大一番の“普段着野球”が頂点につながると確信している。